「りんごの木を植えて」 大谷美和子・作/白石ゆか・絵(ポプラ社、定価1650円)
みずほは小学5年生。大好きな祖父にがんの再発がわかったが、祖父は「積極的な治療」は行わないという。それって、どういうこと?
みずほはどうしても受け入れられない。「『たとえ明日、世界が滅亡しようとも、今日わたしはりんごの木を植える』ということばを知ってるか?」。祖父がみずほに語る。マルティン・ルターのことばだ。「明日世界がなくなるとわかってるのに、そんなむだなこと、なんでするの?」とみずほ。
病気と向き合いながら、大好きな絵を描き、庭仕事をして毎日をのびやかに暮らす祖父。そして祖父や家族と語り合う時間のなかで、みずほは「おじいちゃんの生き方」を見つめ……。
「人間が生きること」そして「死ぬということ」を考える珠玉の物語。
「風の神送れよ」 熊谷千世子・作/くまおり純・絵(小峰書店、定価1650円)
「コロナのばかやろう、早く消えてなくなっちまえ!」。コロナ退散の祈りもこめて、ぼくらは「コトの神」を谷へ送る!
小学6年生の優斗たちが暮らす地区で、約400年の間継承されてきた「コト八日行事」。厄災や伝染病をもたらす疫病神(コトの神)をはらい、地区境まで送り出す2日がかりのこの行事は、準備から本番まで、すべてが子どもたちの手にまかされる。はじめは行事を面倒に感じていた優斗だったが、コロナ禍で家族と離れて暮らす宇希や、祖父が大けがをした柚月の思いに触れるうちに、行事を伝えていく意味を考えるようになっていく。
さまざまな困難に立ち向かいながら、懸命に責任をはたそうとする子どもたちの姿をいきいきと描きだす、成長と友情の物語。
「ぼくの弱虫をなおすには」 K・L・ゴーイング・作/久保陽子・訳/早川世詩男・絵(徳間書店、定価1760円)
小学校4年のゲイブリエルには、こわいものがたくさんある。クモ、いじめっ子の上級生、大きなトラック……。何よりこわいのは、5年生に進級すること。5年になると、いやな上級生と同じ校舎になるから……。自分はぜったいに5年生にはならない、と決めた。でも、親友の女の子フリータは、これに大反対!
ゲイブリエルの弱虫をなおす作戦を考えて、夏休みはその作戦にふたりでとりくむことになった。とちゅうまではうまくいっていた。ところが、ゲイブリエルのある思いつきのせいで、フリータの家族をまきこんでしまう……。
1976年アメリカ・ジョージア州を舞台に、偏見や人種差別の問題にふれつつ、苦手を克服する子どもたちの友情と成長を描いた、心にひびく物語。
「捨(す)てないパン屋(や)の挑戦(ちょうせん):しあわせのレシピ」
「捨てないパン屋の挑戦:しあわせのレシピ」 井出留美・著(あかね書房、定価1430円)
自然や虫が大好きだった田村さんは、環境問題の仕事をしたいと思い、モンゴルでツアーガイドをしました。ヤギの解体を目にし、命を全く無駄にしない食べ方に感動した田村さんは、高齢の両親を助けようとパン屋を継いだものの大量のパンの廃棄に矛盾を感じ、毎日悩みます。
そんなおり、モンゴルの友人が「捨てるなんておかしい」と言います。「俺が一番わかってる。でも日本では仕方がないんだ」と怒ってしまった田村さんは、強い自己嫌悪から「パンを捨てない方法」を求めヨーロッパへ修業の旅に出ます。ヨーロッパで目にした光景は、日本とは正反対のパン作りでした。
ニュースで話題になった「捨てないパン屋」の奇跡を描く、ノンフィクション。