診察(しんさつ)をする金原(かねはら)さん=山口県下関市(やまぐちけんしものせきし)で
場面緘黙に当てはまると思ったら、右の質問表=SMQ-R=(かんもくネット 2011)を書いてみましょう。A「幼稚園や学校」とC「社会的状況」(学校外)の項目に、0「全くない」や1「まれにある」が多い場合は、場面緘黙の可能性があるので担任やスクールカウンセラーに相談するとよいでしょう。医療機関に行くことを勧められたら、かかりつけ医に相談し、診てもらえる医療機関を探してもらいます。コミュニケーションや言語の問題が影響している場合もあるので、子どもの発達に詳しい医療機関を探しましょう。小児科医の金原洋治さんは「説明や対応が、本やネットで読んだ情報と大きく違ったら、他の医療機関を探してみるといいです」とアドバイスします。
次の五つの診断基準にすべて当てはまれば場面緘黙です。
(1)他の場面(例えば家庭)では話しているのに、普通なら話す場面(例えば学校)ではずっと話せない
(2)そのことが勉強や仕事、他人とのコミュニケーションを妨げている
(3)少なくとも1か月続いている
(4)話せないのは、話し言葉の知識が不足しているからとか、話すことを楽しいと感じていないからではない
(5)吃音などのコミュニケーション症や自閉スペクトラム症、統合失調症とは別のものだが、それらと場面緘黙が同時に起こる場合もある
まずは不安を減らす
場面緘黙と分かったら、金原さんは本人に、今後の治療や取り組みで治ることと、今は話したい気持ちより不安や緊張の方が強いので不安や恐怖を起こす場面に段階的にチャレンジすると話せるようになること――を伝えるそうです。「そのために、最初は不安を軽くすることを大切にします。小さなチャレンジと成功体験の積み重ねが自信になり、本人の経験値が上がって、話したい・変わりたいという気持ちが不安を上回り話し出す時が必ず来ます」と説明します。治療は楽しく・無理なく・少しずつが基本だといいます。
具体的には、学校の先生に協力をお願いし、学校で何に困っているかを確認し、授業や活動に参加しやすくなる方法を提案してもらいます。どのような方法がうまくいくかは一人ずつ違います。本人の意思も確認しながら進めましょう。例えば、親しい友達を隣の席にしてもらったり、発表を代読してもらったりすることなどが考えられます。クラスメートと違う対応をしてもらい気が引けるかもしれません。しかし、これは「合理的配慮」といって、公立の学校は配慮することが法的に義務づけられています。私立は今は努力義務ですが、学校にお願いすることができます。
金原さんは「最終目標は、不安や緊張をコントロールして持っている力を発揮できるようになることです。それを目指して、細かいステップを踏みながらあきらめずに取り組みましょう」と呼びかけます。【塩崎崇】
場面緘黙質問票=SMQ-R(かんもくネット 2011)
0全くない・1まれにある・2よくある・3いつも――の数字を記入してください。
A幼稚園や学校 合計( )点
(1)( )必要に応じて、たいていの同級生と学校で話す
(2)( )必要に応じて、特定の同級生(友達)と学校で話す
(3)( )先生の問いに、声を出して答える
(4)( )必要に応じて、先生に質問する
(5)( )必要に応じて、たいていの先生や学校職員と話す
(6)( )必要に応じて、グループの中やクラスの前で話す
B家庭や家族 合計( )点
(7)( )必要に応じて、よその人が家にいても家族と話す
(8)( )必要に応じて、慣れない場所でも家族と話す
(9)( )必要に応じて、同居していない親戚の人(例えば、祖父母やいとこ)と話す
(10)( )必要に応じて、親や兄弟と電話で話す
(11)( )必要に応じて、家族でつき合いのあるよく知っている大人と話す
C社会的状況 合計( )点
(12)( )必要に応じて、知らない子どもと話す
(13)( )必要に応じて、家族の知り合いだが知らない大人と話す
(14)( )必要に応じて、医者や歯医者と話す
(15)( )必要に応じて、買い物や外食でお店の人と話す
(16)( )必要に応じて、おけいこごとや学校外のサークル活動で話す
※場面緘黙の子どもは、AやCの各項目の点数が、0「全くない」や1「まれにある」の場合が多いです。
「あなたらしく」では、さまざまな人を理解し尊重するとともに、自分自身も大切にできるような視点を伝えます。タイトルは、ダウン症のある鈴木俊太朗さんが描きました。