濱田元子 毎日新聞 論説委員
「ジェンダーバランス白書(はくしょ)2022」を公表(こうひょう)した「表現(ひょうげん)の現場(げんば)調査団(ちょうさだん)」のメンバーら=東京都内(とうきょうとない)で8月(がつ)24日(か)
人口の半分は女性が占めています。けれども自分のまわりや、テレビのニュースを見ると、どうでしょうか。政治にしても、経済にしてもエラい人は、男の人の方が多くないですか?
ニュージーランドやフィンランドのいまの首相や、ドイツの前首相など、世界では女性が政治のトップにいることも珍しくありません。でも日本では、いまだに女性の総理大臣は誕生していません。
芸術界においても、ジェンダーギャップ、すなわち男性と女性の割合に差があることが調査により、目に見えるようになってきました。美術家や映画監督、研究者らでつくる「表現の現場調査団」が、美術、映画、演劇、文芸などの分野について、男女の比率を調査した「ジェンダーバランス白書2022」を公表しました。
これによると、各分野で活躍するための入り口となる賞での、「審査する側」と「受賞する側」、大学などの教育機関における「教える側」と「教わる側」での男女の比率の不均衡が明らかになりました。
たとえば、演劇分野では、20年までの過去10年間の知名度の高い賞やコンペティションを調べたところ、審査員の76%、大賞受賞者の64%を男性が占めていました。キャリアの形成において男性が優位な現状が分かります。
過去10年間に主な15の美術館で開催された個展は、85%が男性作家によるものでした。
ほかにも、美術系の大学では学生の74%が女性だったのに対し、教授は81%が男性です。
ジェンダーギャップはそれ自体が問題であるだけでなく、いびつな力の不均衡によって、セクハラやパワハラといった、いやがらせ(ハラスメント)が生まれやすくなります。
審査員の男女比率など、すぐ改善に着手できるところもあるでしょう。不均衡が放置されることがないよう、一人一人が関心を持ち続けることも大切です。
大阪本社学芸部などを経て、2010年から東京本社学芸部で現代演劇、演芸を担当。18年から論説委員兼務。年350本以上の舞台芸術を鑑賞。共著に「春風亭一之輔 落語のたくり帖」。