田中泰義 毎日新聞編集編成局次長
商業(しょうぎょう)運転(うんてん)開始(かいし)から45年(ねん)が経過(けいか)した関西電力(かんさいでんりょく)美浜(みはま)原発(げんぱつ)3号機(ごうき)(奥(おく))。手前(てまえ)から1号機(ごうき)、2号機(ごうき)=福井県美浜町(ふくいけんみはまちょう)で2021年(ねん)6月(がつ)、本社(ほんしゃ)ヘリから
政府は、原子力発電所の新増設や原則40年としている運転期間の延長を検討する方針を表明しました。これまで政府は2011年に発生した東京電力福島第1原発事故を理由に、原発に頼らない政策を掲げてきました。毎小のみんなは、原発への回帰を鮮明にした政府の方針転換をどう考えるかな。
原発とはウランを使って電気を作る施設です。石炭や石油、天然ガスなどの化石燃料を使う火力発電所と違い、地球温暖化の原因となる二酸化炭素を排出しません。今年の夏も暑かったですが、地球温暖化が進むと熱中症の患者が増えたり、農作物に被害が出たりと、私たちの生存を危うくします。そこで、化石燃料に頼らない「脱炭素社会」の実現に向け、太陽光や風力などの再生可能エネルギー、原発が注目されました。
これらの方法のうち、日本は、福島第1原発事故を教訓に、「脱原発」を目指しました。しかし、太陽光や風力は雨が降ったり、風が弱かったりすると十分な発電量を得られません。不足分は結局、化石燃料を使う火力発電に頼ることになったのですが、大きな出来事が発生しました。
今年2月に始まったロシアによるウクライナ侵攻です。日本は、大半の化石燃料を海外に依存し、ロシアは石油や天然ガスを輸出するエネルギー大国です。世界情勢は不安定となり、化石燃料を確実に得られるかどうか不透明になり、政府は再び原発に目を向けたのです。
現在、原発の運転期間は原則40年、原子力規制委員会が認めれば最長60年と決まっています。原発を新たに建てなければ、いずれはゼロになります。原発を長期的に利用するには、運転期間の見直しや新増設が必要になります。岸田文雄総理大臣は関係者に「年末までに具体的な結論を出せるよう検討を加速してください」と指示しました。
電気は必要で、温暖化もストップしなければなりません。原発事故は二度と起こしてはなりません。解決の難しい問題です。
医学や地球温暖化、原発などを担当。学生時代はオーロラを専攻した理系人間。本物が見たくて休職し、アメリカのアラスカ大学に留学。40代でバイオリンを始めた。1966年岐阜市生まれ。