聞こえない人たちとマスク
こんにちは。今年はどんな夏休みになりましたか?
今日はマスクの話をしたいと思います。新型コロナウイルス感染が始まってから2年が過ぎましたね。その間、私のような聞こえない人たちにとってマスクをつけるだけで大変だったことがありました。皆さんも、マスクで音がこもってよく聞こえないなど、不便なことがあったでしょう。もしかしたら、同級生の「顔」がはっきり分からないこともあるかもしれません。
聞こえない人は声や音が聞こえていない分、表情や口の形をしっかり見ることが多いです。そのため、マスクをしているとスーパーの買い物などで「ちょっとしたこと」のやりとりが全く分からなくなってしまいます。「割り箸を(ポリ袋に)入れますか」というのは口の形で読める場合もあり、コロナ前ではそれを読んで答えていました。今は全く分かりません。それでも毎回、筆談やジェスチャーでお願いすることはしません。そんな時に救いになるのが、セルフレジです。割り箸、ポリ袋、ストローまで自分で取れるので楽です。コンビニによっては、「自分でお取りください」と割り箸などが全てレジに置かれているところもありました。この方法は、聞こえない人だけではなく、どんな人でも気軽に必要な分を取れていいなと思いました。
手話にも影響
さらにマスクだと、どんな顔をしているのか見えませんよね。笑っているのか怒っているのか、分かりづらくなります。聞こえない人の中でも手話を使う人にとって、マスクがあると会話が不完全なものになってしまいます。手話で話す時、表情は欠かせないからです。聞こえる人だったら、声に感情が込められなくなるようなものでしょうか。同じ言葉でも、怒っているかふざけているかなど言い方や声の大きさなどで違うことはありませんか? それほど重要な意味が、手話の時の表情にはあります。それが半分も見えなくなってしまうと、手話が読み取りにくくなってしまうんです。そんな時は、マスクを外したり、透明マスクを使用したりして伝えます。
聞こえない人たちにとって、マスクは聞こえる人たちとの壁を作ってしまうものだなと感じました。一日でも早く、はっきり顔が見える日がやってくるといいですね。
■今月の手話
毎月、手話を紹介します。一緒にやってみましょう。
犬
両手を開いてこめかみのあたりまで上げ、親指以外の4本の指を前に倒す
猫
右手を握ってほおの横におき、親指側でほおを丸くなでるようにする
動物
(1)全ての指を軽く曲げて下に向ける
(2)ぐっと前に出す
■KOTOMI COLUMN
病院ではどうしている?
聞こえない人が病院へ行くと、診察に呼ばれるときは看護師などが直接来てくれます。かかりつけの病院では、アイコンタクトで分かることもあります。病院に行くとき手話通訳の同行もできますので、それを活用する聞こえない人もいます。病院によっては手話ができる看護師がいて、医師の話を通訳してくれることもあります。ほとんどは筆談やパソコンを使って説明してくれますね。
佐久間琴弓
1996年生まれ、東京都出身。生まれた時から耳が聞こえず、家族全員が耳の聞こえない「デフファミリー」で育つ。高校までろう学校に通い、大正大学表現学部卒業後、2019年に毎日新聞社に入社。趣味は音楽鑑賞と旅行。
【監修】立教大学日本手話講師・佐沢静枝さん
「あなたらしく」では、さまざまな人を理解し尊重するとともに、自分自身も大切にできるような視点を伝えます。タイトルは、ダウン症のある鈴木俊太朗さんが描きました。