Q サトイモの葉は水をはじきますが、どんな構造になっているのですか?(岡山県倉敷市、小4)
葉の表にでこぼこ 水をはじく成分も
A 秋から冬にかけて旬を迎えるサトイモ。葉は大きなハート形をしています。水をかけると、玉のように丸まって転がり落ちます。
東京薬科大学生命科学部の野口航教授に聞きました。「葉の表面の表皮組織がでこぼこしていることと、クチクラ層というワックスが多く含まれた部分があるためだと思います」と説明します。
植物の葉は表皮で覆われています。サトイモの葉の表面の表皮を顕微鏡で見ると、約10マイクロメートル(約0・01ミリメートル)ほどの小さなでこぼこがあります。ここに空気が入り込み、水と葉の接する部分を減らします。クチクラ層は表皮の外側を覆う膜で、水をはじきやすいロウが主成分です。
ハスの葉にも同じように表面に小さなでこぼこがあり、水をはじきます。こうした水をはじく仕組みを、ロータス(英語でハス)効果といいます。
ハスやサトイモのほかにも、水をはじく植物はあります。「ブロッコリーの食べる部分である花蕾や、スイレン、アサザなど葉を水に浮かべる水生植物は水をよくはじきます」
水田(すいでん)地帯(ちたい)の一角(いっかく)に咲(さ)くハス
植物は葉に受けた太陽の光をエネルギーにして、二酸化炭素(CO2)と水から、成長に必要なデンプンなどを作り出します。これを光合成といいます。葉の表皮には気孔という穴があり、そこからCO2や水蒸気が出入りします。
ハスやスイレンのように水面にある植物は、葉の表面にしか気孔がなく裏面にはありません。「そのため、よく水をはじくことは、気孔から取り入れたCO2などの気体の移動に有利になると思います」と野口さん。
なぜ水をはじく構造になっているのでしょう。「表面に気孔が多く、ぬれやすい葉の場合、水が気孔に入り込むとCO2などの気体の移動(拡散)をさまたげたり、アミノ酸などの栄養成分を水と一緒に葉の外に出してしまったりします。また、水の中には感染性のバクテリアやウイルスが入っているので、ぬれやすいと感染しやすくなります。葉が水をはじくのは、葉に汚れをつきにくくするためではないでしょうか」
水をはじくロータス効果は、生活の中で応用されています。身近な例では、ヨーグルトのフタです。フタに無数の小さなでこぼこをつけることで、開けたときにヨーグルトがフタにつきにくくなっています。このように生物の構造や機能を技術に応用することを、バイオミメティクス(生物模倣=生物のまねをすること)といいます。【篠口純子】
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