廃炉(はいろ)作業(さぎょう)が続(つづ)く東京電力(とうきょうでんりょく)福島(ふくしま)第(だい)1原発(げんぱつ)の1号機(ごうき)=福島県大熊町(ふくしまけんおおくままち)で2022年(ねん)11月(がつ)7日(なのか)(代表撮影(だいひょうさつえい))
暑さ寒さの厳しい季節になると、冷暖房の利用で電気の使用量が増えます。このときニュースなどで「原子力発電所(原発)」という言葉を目や耳にすることがあります。原発とは何なのか、くわしく見ていきましょう。
あらゆる物質は「原子」という小さなものでできています。原子の中心には「原子核」があり、ある条件にすると分裂します。分裂して、原子核が割れることを「核分裂」といい、とても大きな熱を出します。原発ではこの熱を発電に利用します。燃料には、「ウラン」という鉱石に含まれる、核分裂を起こしやすい「ウラン235」などで作られた「核燃料」を使います。
原子力というと原子爆弾(原爆)を思い出しますが、原爆はウラン235などの割合を100%近くまで高め、一気に核分裂を起こして爆発させます。一方、核燃料はウラン235の濃度が数%と低く、ゆっくりと核分裂をさせることから、原爆のような爆発を起こさないとされます。
石油に頼らず発電
原発は1950年代から世界に広がり、日本では66年に東海発電所(茨城県東海村)が運転を始めました。その後、経済が成長する中で、数を増やしました。多いときには、日本で使う電気の3割ほどを原発が作っていました。世界を見ると、フランスは7割ほどの電気を原発に頼っています。
原発が広がった背景には、資源の問題があります。石油や石炭などを燃やして電気を作る火力発電は、それらが急に値上がりしたときなど、電気を安定して作れません。
ウランは比較的どこからでも入手しやすく、使う量も少ないため、その心配があまりありません。このため「未来のエネルギー」などと、もてはやされました。石油や石炭などと異なり、温室効果ガスを出さないのも特徴です。
つきまとう事故の心配
しかし、原発には大きな問題があります。
一つは「核のゴミ」です。核分裂が起こると、目に見えない光の仲間の「放射線」が発生します。強い放射線は、人を殺したり重い病気を引き起こしたりします。原発での使用が終わった核燃料の「核のゴミ」も、放射線を出します。放射線が少なくなるのに数万年かかる物質も混ざっています。このゴミは、地中深くに埋めるぐらいしかありませんが、日本では、その場所がまだ決まっていません。
もう一つは事故です。1986年には、旧ソ連(現在のロシア、ウクライナなど)のチェルノブイリ原発で大事故がありました。日本でも2011年、東京電力の福島第1原発で事故が発生しました。建物の爆発などで、放射線を出す「放射性物質」が遠くまで飛び散りました。福島県では、今もふるさとに帰れない人がいます。
福島第1原発の事故後、安全性への心配から、日本では、多くの原発が運転を止めました。事故直前に54基あった原発は廃止が進み、現在は33基です。運転中の原発を止めるよう訴える声も少なくありません。
原発がほとんど動いていない中、電気の7割以上は火力発電から生み出されています。国は電気を安定して作ったり、温室効果ガスを減らしたりするため、原発の安全性を十分に確かめながら、今後も原発を使う必要があると考えています。【長岡平助】