点字ブロックの始まり
「お! すごい!」。私は思わず声を上げそうになりました。今年の1月、自宅の最寄り駅近くの道を白いつえを使って一人で歩いていた時のことです。駅の入り口からそばの交差点につながる黄色い「点字ブロック」が新しくなっていたんです。
それまでのものは古かったせいか、つえの先や足の裏で確かめにくく、たどりにくかったんです。それが、はっきり分かるようになったんです。安心感が増し、とてもうれしくなりました。点字ブロックの張り替えは、歩道の下に埋まっている水道管の入れ替え工事に合わせて数日かけて行われたそうです。
点字ブロックは、中国地方にある岡山市で生まれました。記念日もあります。3月18日です。1967年のこの日に世界で初めて岡山の盲学校近くの交差点に付いたんです。駅のホームに初めて付いたのは1970年、こちらは大阪の盲学校の近くです。
点字ブロックは正式には「視覚障害者誘導用ブロック」と言います。種類は二つあります。一つは「誘導用」。浮き出た線が何本かあって「線の方向に進んでも安全だよ」と教えてくれています。もう一つは「警告用」。浮き出た点が幾つかあって「階段や行き止まり、分かれ道の前だから注意してね」と知らせてくれているんです。
点字ブロックが初めて付いた岡山市の交差点近くには記念碑が建っています。目が見えなかったり見えにくかったりする人たちが仕事をしている「岡山ライトハウス ワークランド虹」では「点字ブロックせんべい」と「点字ブロッククッキー」が売られています。クッキーは、触ると、浮き出た線や点が分かるように作られているんです。
安全に歩くために
交差点や駅などで見かける点字ブロックですが、岡山市内では新しいチャレンジが始まっています。これまで設置されることがなかった商店街の中に点字ブロックを付けて、視覚に障害のある人たちが安心して通れるようにするための実験が去年、行われたんです。
皆さんにお願いです。街の中にある点字ブロックの上に立ち止まったり自転車や荷物を置いたりしないようにしてください。「点字ブロックは、見えない・見えにくい人が安全に歩くためにとても大切なもの」ということを忘れないでいてほしいです。
◆コラム
点字ブロックの活用
点字ブロックをスマートフォンのアプリで活用しようという試みも出てきています。記念日と同じ今年の3月18日、JR大阪駅の北側(うめきたエリア)に地下ホームがオープンしました。その改札の中にある点字ブロックには、QRコードが貼られています。それにスマホのカメラを向けると、トイレやホームにつながる階段までの道順を声で案内してくれるんです。
佐木理人
1973年生まれ、大阪府出身。生まれた時から目が見えにくく、中学生の時にほとんど見えなくなる。神戸市外国語大学大学院外国語学研究科(英語学専攻)を修了。2005年に毎日新聞社に入社。趣味は食べることとアニメ観賞。
「あなたらしく」では、さまざまな人を理解し尊重するとともに、自分自身も大切にできるような視点を伝えます。タイトルは、ダウン症のある鈴木俊太朗さんが描きました。