10代女子に重大な問題だ――。日本の女子中高生の8割超が、運動量に対するエネルギー不足から無月経や骨粗しょう症のリスクを抱えていることが分かった。体格に対する誤ったイメージの表れで、特に運動する生徒は深刻な影響が体に出ていた。
スポーツ庁の委託を受けた順天堂大女性スポーツ研究センター(東京都文京区)が調査した。
運動量に対するエネルギー不足から女性が無月経などに陥るのは「フィーメール・アスリート・トライアド(FAT)」と呼ばれる。卵巣から分泌される女性ホルモンのエストロゲンは骨を丈夫にする働きがあるため、無月経になると、骨密度の低下で骨粗しょう症につながる。
調査に当たった桜間裕子特任助手は「体重増を気にする日本の女子中高生は成長期に必要なエネルギーが足りていない傾向にある。学校や指導者がリスクを十分に教えるべきだ」と指摘する。
アスリートは要注意
センターは、関東甲信や東海地方の中学校と高校計9校の女子生徒を対象としてFATに関する調査を実施。運動部などに所属する生徒と運動習慣のない生徒の計1214人から有効回答を得て、2019年12月に結果をまとめた。
質問は25項目。うち「食べるものを制限したり、慎重にコントロールしたりしているか」など、米国スポーツ医学会が考案した9項目に一つでも当てはまるとFATの危険があるとされる。今回の調査では、運動する生徒は81・1%、しない生徒も80・7%が当てはまった。
運動習慣の有無にかかわらず高かった点について、桜間さんは「日本の10代女子は痩せ願望が強く、食事を制限するなど誤った摂食行動をとるため、運動していなくてもエネルギーが足りていないと考えられる」と指摘。「自分の体重や体形に不満がある」のは、運動しない生徒が70・0%で、する生徒は64・0%だった。
若いのに骨粗しょう症
一方「疲労骨折の経験がある」「現在月経が止まっている」と答えたのは運動する生徒がいずれも5・5%で、しない生徒(疲労骨折2・3%、月経止まっている1・9%)より深刻だった。
今回の調査で「現在、体重を減らす必要がある」と答えたのは、運動しない生徒で58・0%に上り、する生徒でも49・2%だった。また、運動する生徒は「運動ができなかったら、体重が増えると思う」としたのは53・8%で、体重増への不安感が強いことが分かった。桜間さんは「月経を記録することや食事をきちんと食べることが大切。運動する人は特に気をつけてほしい」と話している。
■KEY WORDS
【無月経】
月経は、通常1カ月の間隔で起こる、子宮内膜からの出血。視床下部、下垂体、卵巣、子宮の連携した働きによって起こるが、無月経はそれが崩れ、月経がないことだ。18歳以後でも初潮のない原発性無月経と、それまであったのに、3カ月以上起こらなくなる続発性無月経がある。それぞれの器官に問題がある場合のほか、最近はストレス、過激なスポーツ、ダイエットなどによって起こるケースが若い人中心にある。
【骨粗しょう症】
骨多孔症とも呼ばれ、骨にスポンジのような小さな穴が出来て、目の粗い軽石のようになり、もろく折れやすくなる。もともとは閉経後の女性に多いと言われていた。女性ホルモンの欠乏などに伴い骨密度が年々低下していくのが原因とされる。骨折を起こしやすくなるため高齢者の寝たきりの一因になっている。
【フィーメール・アスリート・トライアド(FAT)】
Female(女性)、Athlete、Triad(3要素)の3語からなる言葉。「エネルギー不足」▽エネルギー不足などが原因とされる「視床下部性無月経」▽「骨粗しょう症」――の三つの状態が密接に関連するメカニズムだと定義されている。エネルギー不足が無月経と骨粗しょう症を、無月経が骨粗しょう症を引き起こす原因だとしている。