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15歳のニュース Interview ヤングケアラー 演歌歌手 市川由紀乃さん(44)

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演歌歌手の市川由紀乃さん=大阪市で10月23日、長尾真希子撮影
演歌歌手の市川由紀乃さん=大阪市で10月23日、長尾真希子撮影

不安でいっぱいだった15歳の頃 経験は必ず生きる

 通学をしながら家族の介護かいごや世話をする子ども「ヤングケアラー」。「紅白歌合戦」に2年連続出場した演歌歌手の市川由紀乃いちかわゆきのさん(44)は中学生時代、7さい上の脳性まひの兄の世話を一手に引き受けていた。いわば、ヤングケアラーの先輩せんぱいだった市川さんに、当時の生活や思いをかえってもらった。【長尾ながお真希子まきこ

兄の世話 一手に引き受け

 市川さんが中学1年の時に、両親が離婚りこん。一家の家計を支える母親に代わり、左半身が不自由など重い障害のある兄の世話をすることになった。「当時はヤングケアラーという言葉もない時代でした。学校が終わった放課後に、兄のリハビリもねて散歩に行ったり、買い物に行ったりしていました」

 6じょう一間のアパートにかたを寄せあい、仕事で帰りがおそい母親に代わって、食事を作り、兄の世話をしていたという市川さん。当時のごちそうは、具なしの素うどん。「乾麺かんめんは安いので特売日に大量に買っておくんです。3種類のめんつゆを用意して食べるのが大好きでしたね」

共感に救われて

 ヤングケアラーの中には、周囲に介護かいごしていることを明かすことができず、孤立こりつする人も多いという。しかし市川さんの場合は、友人に恵まれた。「周囲に祖母の介護や体が不自由な家族の面倒めんどうを見ているという友達が多かったんです。状況じょうきょうを話すと、『わかるー!』と共感してくれる人が学校にいたのには、本当に救われましたね」

 当時の夢は演歌歌手。夕食後に自宅でカラオケを歌うことが、ストレス発散にもなっていた。

 転機は高校2年の16さいの時。地元・埼玉さいたまの新聞社が主催しゅさいするカラオケ大会で優勝すると、芸能事務所からスカウトされ、翌年、念願の歌手デビューを果たした。2008年に39歳で亡くなった兄は、歌手である市川さんの一番のファンだったという。「私が15歳の時は、自分の夢や家庭環境かんきょうのことを考えると、不安でいっぱいでした。でも家庭環境は、変えられない運命。だからこそ、普通ふつうではできない経験をさせてもらい、思いを歌に乗せることができるようになった。つらいこと、苦しいことを経験したら、次は大きな喜びが待っている。経験は必ず、大人になった時に生きてくるはずです」


プロフィル

 1976年、埼玉県さいたま市生まれ。93年に「おんなの祭り」でデビュー。最新シングル「なごり歌」がヒット中。11月7、8日に大阪市の新歌舞伎座でコンサート開催予定。


 ■KeyWord

【ヤングケアラー】

 慢性まんせい的な病気や障害などがある祖父母、両親、きょうだいなどの家族の介護かいご・世話をしている子どものこと。介護の負担が重くなりすぎると、勉強や進路に深刻な影響えいきょうが出ると心配されているが、実態はほとんど知られていない。政府が初めて今冬から、全国の中学生と高校生に実態調査を行うことになった。

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