背丈よりも長いなぎなたを振るい、心を研ぎ澄まして勝負する気迫に満ちた競技。今回の部活HEAVENは伊丹市立伊丹高校(兵庫県)のなぎなた部を紹介する。(井上梢)
◆なぎなた部 伊丹市立伊丹高校(兵庫県伊丹市)
「めんっ」「すねっ」
飛び交う声と、なぎなたで打ち合う音。はだしが床を小刻みに前後左右へ動く。体にまとう防具の重さは全部で約10キロ。相手の打突(打ち込み)をかわしながら次の技を繰り出す。背筋を伸ばし、ひるむことはない。隙を探す鋭い眼光からは、りんとした心の強さをも感じる。
古くは平安時代の武蔵坊弁慶の操った武器。江戸時代には女性の護身用として使われ、武家の女子は必ず習得した。白い稽古着と黒い袴に身を包んだ部員は礼をすませると、2人ずつ相対する。演技競技では防具をつけず、形やしかけ技、それに対する応じ技を披露する。呼吸を合わせた動きが見どころだ。
練習では一区切りごとに「切っ先(先端)が下がっちゃってた」「力に頼りすぎ」と助言し合う。試合競技の練習は防具をつけ、面、小手、胴、すねを狙っていく。相手との距離、間合いが肝だ。近すぎても遠すぎてもよくない。相手が打ってくれば、なぎなたを立てて受け、自分の打突が届く間合いで打つ。前部長の高校3年、島本春音さん(17)は「試合前はいつも怖い。でも始まったら何も考えず技を出すだけ」と語る。
伊丹市は「なぎなたの聖地」とも呼ばれ、全日本なぎなた連盟の本部や、戦前からなぎなたを市民らに教えていた修武館がある。市立中学校では体育の授業でなぎなたを習う。部員は週に1度は修武館を訪れ、緊張感漂う道場で心身をきたえる。
酷暑での防具、極寒の中の素足。それでも日々の鍛錬は欠かせない。だからこそ本番できれいに一本が決まったときの喜びは他で得られない魅力だ。
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【なぎなた】
長さは約210~225センチ。重さは650グラム以上。刃部がわずかに湾曲している。礼儀を重んじる古くから伝わる武道。剣道と似ているが、打突部位にすねが加わる。