
男性読者による投稿欄「男の気持ち」。「女の気持ち」とともに出来事や悩みなど「時代の心」を映しています。
-
おとうさん 兵庫県朝来市・吉中嘉一郎(無職・71歳)
2023/6/3 05:48 545文字「おとうさん」。3人の娘はいつも、私をそう呼んでくれる。私は母子家庭で育った。父親の存在を知らないので、父を呼ぶこともない。ずっと親は「おかあちゃん」だった。 以前に住んでいたところでの出来事である。私は小学校高学年で、男性ばかりの集会に母の代理で出席していた。「吉中さん、どう思う?」と司会の方か
-
GWの思い出 福岡県直方市・宮木慎次郎(70歳)
2023/6/2 05:11 552文字かつて私のゴールデンウイーク(GW)はすさまじかった。目まぐるしい日々を大車輪で過ごしたものだ。孫が「GWは私の家に泊まりに行きたい」と言っている、と息子から聞き、大いに意気に感じたのだ。 1日3食、1週間分のメニューを作成し、買い物のメモを片手に食材を集めて回った。男手ひとつのハンディをはね飛ば
-
ハグ 東京都足立区・浅野敏久(アルバイト・67歳)
2023/6/2 02:01 525文字近ごろ、ささいなことで目が潤む。母のことをよく思い出すのだが、母をハグした記憶がないことに気づいた。 あいさつのハグは、若いころには縁がなかった。勤めていた会社を定年退職する際、仕事でいい関係を築けた女性2人に生まれて初めてハグをされたときは驚いた。 ギュッとされ、言葉をかけられて花束を渡され、温
-
張り合い 大阪府吹田市・山下悟(無職・69歳)
2023/5/30 05:44 568文字新型コロナ感染拡大で外出もままならない中で退職、「サンデー毎日」になって3年。前向きに過ごすようにしている。 体力低下を考慮して昨年、地元の川柳会に入会し、仲間もでき毎月の句会を楽しんでいる。作句は助詞、動詞、形容詞や倒置法などの使い方で、十七文字の短詩がカラフルなものになる。勉強と思い毎朝、辞書
-
家庭菜園 宮崎市・竹本光伸(72歳)
2023/5/29 05:26 548文字家庭菜園でいろんな野菜を植えているが、今陣取っているのはキャベツである。今年は苗の植え付けが遅れたため、チョウチョが卵を産み付けにやってくる時期と重なった。このため、市内に住む孫たちがやって来ては、喜んで虫取り網を手に持ち、チョウチョ捕りに余念がない。 私はといえば、植え付けの遅れで、まだ完全に葉
-
-
消えた光景 埼玉県宮代町・野口昌男(無職・79歳)
2023/5/27 02:01 522文字あの子どもたちは、どこにいってしまったんだろう。かつてはスーパーなどでよく見かけたのだが。 「買って、買って」と床に大の字になって手足をバタつかせ、泣き叫ぶ子どもたちだ。小さな体が発散する、はち切れんばかりのエネルギーを感じる。高齢になった私にとって、元気と活力をもらえる光景だった。 お母さんたち
-
我が家とテレビ 滋賀県湖南市 鈴木強(無職・72歳)
2023/5/26 05:06 532文字私の奥さんはテレビの申し子ではないかと思われるくらいテレビが好きだ。お気に入りは吉本新喜劇、再放送されている2時間サスペンス、渥美清の「男はつらいよ」、「鬼平犯科帳」、そして何があっても外せないキムタクのドラマ。 飽きもせず何度も繰り返し見ている。まだ現役で働いているから、気分転換になっているよう
-
映画と青春時代 福岡県岡垣町・中山陽一(89歳)
2023/5/25 05:12 543文字終戦後、文化復興の先駆けとなったのは映画だったと思う。昭和25~26年ごろには街の至るところに映画館があり、繁華街には5、6軒も並ぶほどにぎわっていた。 当時、私は八幡市内(現・北九州市八幡東区)に住む高校生。新聞部で映画紹介や解説を担当していた。「〇〇高校の新聞部です。取材に来ました」と言えば、
-
おっかさん 宮崎県延岡市・甲斐正樹(73歳)
2023/5/20 05:53 543文字今、母親を「おっかさん」と呼ぶ子どもはいないだろう。おっかさん。何て素朴で温かみのある呼び方なのか。おっかさんと口にするだけで目頭が熱くなる。 小学1年生になって間もない頃、学校から走って帰り、「おっかさん」と大声で叫んだ。家の周りを探しても姿が見えない。不安に襲われ、必死になって捜し回った。 だ
-
カレンダーの印 山口県岩国市・片山清勝(82歳)
2023/5/19 05:53 555文字大型連休のにぎわいが戻ったとの報道に触れると、思い出すことがある。 息子が保育園の年中さんの頃だった。壁掛けカレンダーの日付に規則正しく丸印が付いていることに、妻から言われて気付いた。丸印は「お父さんの休みの日」で、息子が妻に確認して書いたという。 当時、私は3交代勤務。朝勤は午前7時、夕勤は午後
-
-
父親の思い 京都府舞鶴市・沢田宗夫(公益社団法人理事長・80歳)
2023/5/18 05:13 547文字3日付本欄「制度が恨めしい」を読んだ妻が漏らした「この気持ち、よくわかるわ」の一言が、胸の中でつかえている。投稿は、地元を離れ東京の妻の実家で暮らす長男に対する母親のさみしい気持ちをつづったものであった。私の長男も、地元の高専を卒業後は大学も就職も遠方、その後も海外生活と、我が家に戻る機会が少なか
-
新1年生 山口県下関市・工藤明男(82歳)
2023/5/17 05:08 560文字町中で登下校する新1年生のピカピカの制服姿が目立つ季節です。小学生、中学生、そして高校生と成長していく節目節目を見ているようで、私にもあんな時代があったことを懐かしく思い出します。 私は、今とは生活環境がまるで違う時代に育ちました。戦後間もない食糧難のころ、小学校に入学しました。その当時は衣食住の
-
バスに乗って 長崎市・奥貫賢治(74歳)
2023/5/16 05:12 566文字70歳になると、長崎市ではバスやタクシーの利用実績に応じ、助成ポイントが交付される交通費助成制度がある。めったにバスに乗ることがないため、その恩恵にあずかることなく1年が過ぎる。もったいない気もするが、その分の税金がほかに生かされるのであれば、無理に利用することはないとも思っている。 だが五月晴れ
-
やっぱり持たぬ 東京都練馬区・関貞三(無職・88歳)
2023/5/16 02:01 537文字88歳にして初めて、ケイタイを持たぬ悲哀を味わった。病気で入院したときのことである。 先月20日の誕生日、手術することになった。当日、入院していた大病院で誕生日に手術する患者は2人だけだという。間が悪いのか、運がないのか。面はゆい気持ちであった。 手術が終わり「退院が2日遅れる」と告げられた。困っ
-
父の弁当 鹿児島県出水市・谷口歩(団体職員・52歳)
2023/5/12 05:12 547文字中学生の時、夜勤で不在の母に代わり、父が私の弁当を作ってくれたことがある。新入部員歓迎サイクリングに行くことになったためだ。 起きると既にできていた。弁当箱らしき二つが新聞紙と風呂敷に包んであった。期待が膨らんだ。力作なのは確かなようだ。気恥ずかしかったが、珍しく面と向かい、「ありがとう」と言った
-
-
心もらんまん 高知市・市原利行(無職・74歳)
2023/5/9 05:10 519文字高知県出身の植物学者・牧野富太郎博士をモデルとしたNHK連続テレビ小説「らんまん」が、朝の茶の間を明るく輝かせてくれています。高知市の街中では、「らんまん」と大きくラッピングされた路面電車が走っています。 一方、自宅近くにある第三十番札所の善楽寺では、「同行二人」と書かれたすげがさをかぶったお遍路
-
兄を超えた 長崎市・下野泰治(85歳)
2023/5/8 05:18 555文字日本人の平均寿命は2040年の推計(厚生労働省)で男性83・27歳、女性89・63歳とのこと。誠に喜ばしいデータである。ただし健康寿命との関係ではかなりの差があり、その差をいかに縮めるかが大きな課題だ。 何も長生きだけが、人生の幸福ではないが、せっかくこの世に生を受けたからには、長生きしたいと誰も
-
初節句 長崎市・松下清(74歳)
2023/5/5 05:08 552文字東京に住む次男夫婦に2月、男の子が生まれ、今度が初節句になる。夫婦は共働きだが、5月下旬に長崎に来ることになり、私の家で遅めの節句を祝うことになった。 そこで亡くなった両親が、私の息子たちに買ってくれた武者人形を飾ることにした。しかし、最後に人形を飾ったのは約40年前。しかも当時の私は仕事に、妻は
-
長寿家族 北九州市小倉北区・冨山健次(78歳)
2023/5/1 05:23 552文字昨年8月に母の末妹が97歳で亡くなり、母の兄弟姉妹である4男6女の計10人が全員旅立った。一番の長寿は三女の104歳だが、五女である私の母が102歳、四女も100歳と、3人が100歳を超えて生きた。若くして亡くなったのは末弟の77歳だが、他は90歳前後まで生きており、正に長寿家族である。 母の生涯
-
JAの店にて 北九州市小倉南区・山口敬司(70歳)
2023/4/30 05:22 551文字先日、久しぶりに大分の実家に帰省した際、JAが営業するなじみの店に寄った。近所のおばあちゃんが作った田舎風のまんじゅうや、地産地消の旬の野菜など、魅力いっぱいの食べ物が並んでいる。子ども時代、大分で育ってきた私にとって、この店の食べ物は、70歳の今になっても味わい深い。 しばしば来店している常連客
-