
ボーン・上田記念国際記者賞受賞、核や国際問題への取材が豊富な会川晴之・専門編集委員のコラム
-
ロシア式「闇バイト」=会川晴之
2023/9/21 02:00 1024文字<moku-go> 「ルフィ」と名乗る男が、フィリピンから日本での強盗を指示し、別の特殊詐欺グループはカンボジアのホテルに詐欺電話の「かけ子」を集めた。今年は、そんな国際的な「闇バイト」が目につく。 いずれも「簡単な仕事で高収入」をうたい文句にネット交流サービス(SNS)で人集めをした。応募した若
-
ウクライナと大統領選=会川晴之
2023/9/14 02:01 1018文字<moku-go> 「ウクライナの勝利は2024年か25年」。英国のバロンズ元陸軍大将がそんな見通しを示すなど、ウクライナでの戦いは年を越す可能性が高まっている。 そうなると、来年に予定されている三つの選挙戦の行方が気になる。ロシアと米国、そして、戦乱の中、実施が困難と見られるウクライナの大統領選
-
正念場を迎えた反転攻勢=会川晴之
2023/9/7 02:04 1028文字<moku-go> ウクライナ軍がロシア軍への反転攻勢を始めてから3カ月が過ぎた。だが、劇的な進展は見られず、苦しい局面が続く。 攻勢着手が遅れ、ロシアに強固な防御網を築く時間を与えてしまったのが苦戦の原因だ。 ウクライナ軍に立ちはだかる壁は、まずは戦車用トレンチ(溝)だ。深さ2・5メートルほどで
-
ロシアの陰にイランあり=会川晴之
2023/8/31 02:01 1032文字<moku-go> ロシアの同盟国として「忠実な下僕」を演じるベラルーシが、最近、イランに接近している。イランが開発した自爆ドローン(無人機)「シャへド136」を、ベラルーシ国内で製造、ロシアに輸出する狙いがあるようだ。 7月末にベラルーシのフレニン国防相がテヘランを訪問、イランのアシュティアニ国
-
親しき仲でも礼儀は別=会川晴之
2023/8/24 02:00 1003文字<moku-go> 北朝鮮のハッカー集団がロシアの有名軍事企業に半年間、サイバー攻撃を仕掛け続けていたことが今月初旬に発覚した。ロイター通信が最初に伝えた。 標的となった「NPOマシノストロエニヤ社」はモスクワ郊外にあり、極超音速兵器をはじめ、人工衛星、弾道ミサイルの開発を手がける。いずれも、北朝
-
-
「代表」復帰を目指す旅=会川晴之
2023/8/17 02:03 1184文字<moku-go> 「なでしこジャパン」の快進撃に沸いたサッカー女子ワールドカップ(W杯)。ニュージーランドと大会を共催するオーストラリアでは、W杯予選の参加資格すら持たない「代表」チームが、複雑な思いで観戦を続けている。 2年前の8月、イスラム主義組織タリバンがアフガニスタンの首都カブールを制圧
-
3回目の「暗黒」記念日=会川晴之
2023/8/10 02:00 1017文字<moku-go> 3度目の「暗黒の日」が近づいている。 2年前の8月15日、イスラム主義組織タリバンがアフガニスタンの首都カブールを制圧、20年ぶりに権力復帰を果たした。以降、「シャリア(イスラム法)」に基づく統治を始める。 「この20年間、風紀が乱れた」。タリバンは、女性問題省を廃止して勧善懲
-
弾薬不足とウクライナ=会川晴之
2023/8/3 02:01 1032文字<moku-go> 「史上最強の軍事同盟が、開戦からわずか11週間で弾薬不足に陥り、米国が穴埋めしている」 12年ほど前の2011年6月、北大西洋条約機構(NATO)の会議で、ゲーツ米国防長官は声を荒らげた。 問題としたのは、その3カ月前に英仏軍が中心に始めたリビア空爆作戦。ろくな武装もないリビア
-
トランプ氏の置き土産=会川晴之
2023/7/27 02:01 1017文字<moku-go> 不発弾が多く「非人道的」な兵器であるクラスター爆弾を、米国がウクライナに供与したことに、批判や疑問の声が相次いでいる。私もその一人だ。 そんな批判が出るのを承知の上で、なぜ、バイデン政権が供与に踏み切ったのか。その背景が気になる。 今月7日の米CNN放送のインタビューで、バイデ
-
KKコンビに学べ=会川晴之
2023/7/20 02:00 1026文字<moku-go> 今からちょうど60年前の1963年7月、米英ソがモスクワで協議を続けた。約2週間の協議を経て、史上初の核軍縮条約、部分的核実験禁止条約に合意する。 激しい対立が続いた東西冷戦時代でも、米ソ両国は核軍縮条約を結んだ。ロシアのウクライナの侵攻を機に高まる緊張も、知恵さえあれば解決で
-
-
米国は「炭鉱のカナリア」か=会川晴之
2023/7/13 02:00 1027文字<moku-go> ワシントン駐在時代、病院通いをしたことがある。治療の副作用で口の中がただれ、痛くてまともに食事がとれない。とはいえ、病気に勝つには体力の維持が重要になる。医師は、力ずくで痛みを抑え込もうと鎮痛剤を処方した。 薬局で処方箋を出し、いつものように保険請求用に「コピーが欲しい」と伝え
-
赤く咲くのはケシの花=会川晴之
2023/7/6 02:02 1038文字<moku-go> アフガニスタンの大地は毎年春、赤く染まる。アヘンやヘロインの原料であるケシの花だ。父とともに1996年5月、アフガンに移り住んだオマル・ビンラディン氏も、そんな風景を目にした。 父は、国際テロ組織「アルカイダ」の首領。サウジアラビア有数の大富豪の家で育ったが、王室に盾突いたこと
-
米露が使う軍用イルカ=会川晴之
2023/6/29 02:00 1015文字<moku-go> 今から20年近く前、クリミア半島の軍港、セバストポリを取材で訪ねた。当時は、ロシア黒海艦隊とウクライナ艦隊がともに母港とする平和な時代だった。 港を見下ろす小高い丘に、ロシア黒海艦隊の司令部があった。その目の前には、巨大なレーニン像。一直線に伸ばした右手の先は、軍港の入り口を指
-
イランと米の裏交渉=会川晴之
2023/6/22 02:02 1020文字<moku-go> イランが核兵器を取得するまで「あと一歩」。そう表現してもよい状況が続いている。 世界の耳目がウクライナでの戦争や、米中の対立に集まる中、イランは核爆弾にも使える高濃縮ウランの製造を粛々と続ける。 国際原子力機関(IAEA)が5月末にまとめた最新報告書によると、イランは60%濃縮
-
「無敵」兵器が負けたワケ=会川晴之
2023/6/15 02:00 1003文字<moku-go> ロシアのプーチン大統領が「無敵」と誇る新兵器に「キンジャル」という名のミサイルがある。 音速の5倍に当たるマッハ5を超す速度で飛ぶ極超音速兵器とされる。これを最高速度がマッハ2・8というロシア最速の戦闘機「ミグ31K」にぶらさげ、高度2万メートル前後で発射する。 陸上競技に例え
-
-
「お騒がせ」な大統領=会川晴之
2023/6/8 02:01 1043文字<moku-go> 「お騒がせ」な首脳と言えば、「欧州最後の独裁者」と呼ばれるベラルーシのルカシェンコ大統領(68)がその筆頭候補だろう。先月下旬には体調不良で「病院に緊急搬送された」とも伝えられた。 かつてソ連邦の一角を占めたベラルーシに、ロシアは核兵器配備の準備を進める。ロシアのウクライナ侵攻
-
シリアの麻薬戦争=会川晴之
2023/6/1 02:01 1029文字<moku-go> 「眠気も空腹も恐怖も感じない」。過激派組織「イスラム国」(IS)の戦士が使い始めたのをきっかけに「ジハーディスト(聖戦主義者)の薬」と呼ばれた合成麻薬がいま中東を席巻している。 現在は、若者が消費の中心だ。「期末試験前に飲むと勉強がはかどる」「ダイエット効果がある」「パーティー
-
「グローバルサウス」争奪戦=会川晴之
2023/5/25 02:01 992文字<moku-go> 広島で開かれた主要7カ国首脳会議(G7サミット)は、ウクライナのゼレンスキー大統領の電撃的な参加により、一気に盛り上がった会合になった。 ゼレンスキー氏の一挙手一投足ばかりに注目が集まったが、真の主役は「グローバルサウス」と呼ばれる新興国・途上国であったことは間違いない。 議長
-
「ファイブアイズ」の矜持=会川晴之
2023/5/18 02:02 1017文字<moku-go> 米英豪が2021年9月に設立した新しい安全保障の枠組み「AUKUS(オーカス)」。今年3月には、豪州が30年以降に米英両国から原子力潜水艦を受け取るスケジュールなどが決まった。 そうした中、北大西洋条約機構(NATO)の設立メンバーで、米国と長い同盟関係を築くカナダが、今月に入
-
「核の傘」と日米韓=会川晴之
2023/5/11 02:00 1028文字<moku-go> 「ソウルを守るため、米国はサンフランシスコを犠牲にする覚悟があるのだろうか」 北朝鮮が米全土を射程内に収める大陸間弾道ミサイル(ICBM)の開発を進めるにつれ、韓国はそんな不安にさいなまれている。もしかしたら米本土への攻撃を恐れ、米国は朝鮮半島有事への介入を見送るかもしれない。
-