重里徹也 フォロー 文芸評論家、聖徳大特任教授 1957年、大阪市生まれ。大阪外国語大(現・大阪大外国語学部)ロシア語学科卒。82年、毎日新聞に入社。東京本社学芸部長、論説委員などを歴任。2015年聖徳大教授。23年4月から特任教授。著書に「文学館への旅」(毎日新聞社)、共著に「村上春樹で世界を読む」(祥伝社) などがある。 (経歴は原則、執筆当時のものです) 村上春樹本の「猫との特別な時間」そして父親への思い 村上春樹はほんとうに猫が好きなんだなあ、と思ったのは、このほど、新版が刊行された絵本「ふわふわ」(講談社)を改めて読んだか… 村上春樹に「Tシャツ」が似合う理由とは あれは1970年代だったか。ジーンズが最も似合う作家は誰かという匿名コラムを文芸雑誌で読んだ記憶がある。答えは開高健だった… 村上春樹に深い影響を与えた「大学構内リンチ殺害事件」 村上春樹が早稲田大学第1文学部に在籍したのは、1968年4月から75年3月までの7年間だ。演劇専攻で、卒業論文は「アメリカ… 村上春樹と川端康成の「意外な共通点」とは 村上春樹の6年ぶりの新作長編「街とその不確かな壁」(新潮社)が刊行されて約1カ月。新聞、雑誌、ネットなどに、多くの書評やイ… 村上春樹が内面を掘り下げる「街とその不確かな壁」 村上春樹の6年ぶりの長編小説「街とその不確かな壁」(新潮社)は求心力にあふれた作品だ。作者がどうしても書きたかったものとい… 村上春樹「街とその不確かな壁」43年前の中編との関係 村上春樹の6年ぶりの長編小説「街とその不確かな壁」(新潮社)が4月13日に発売される。タイトルが発表されて話題になっている… 多和田葉子「地球にちりばめられて」自由を求める旅 この連載「ベストセラーを歩く」は今回が最終回。2015年7月から7年間、読んでいただいた方々に感謝したい。 最後に何を取り… 「ドライブ・マイ・カー」村上文学をかみ砕いて見せた 濱口竜介監督の「ドライブ・マイ・カー」が米アカデミー賞の国際長編映画賞を受賞した。それをきっかけに原作である村上春樹の同名… 独ソ戦を描く「同志少女よ、敵を撃て」女性狙撃兵の胸中 連日、戦禍のウクライナの映像をテレビやネットで目にする。21世紀の現在に、こんなにあからさまに大国が侵略戦争をするとは、誰… 芥川賞「ブラックボックス」若者の閉塞感と暴力衝動 芥川賞を受賞した砂川文次の「ブラックボックス」(講談社)を読みながら、現代の若者の心の中に思いをはせた。行き場のない閉塞(… 直木賞「黒牢城」黒田官兵衛と荒木村重の“ナゾ解き” 黒田官兵衛(後の黒田如水)といえば、豊臣秀吉の名軍師として知られる知将である。司馬遼太郎の愛読者なら、「播磨灘物語」や「新… 伊集院静「ミチクサ先生」が描く“等身大の夏目漱石” 私たちが夏目漱石の小説に感じる独特な品格とは何なのだろう。日本の近代小説を読めば読むほど、別格の作家として、漱石を意識する… 直木賞作家・西加奈子「夜が明ける」は若者への応援歌 若者たちの貧困や子どもたちの窮状はしばしば報道されている。日本は一体、いつの間にこんな国になってしまったのだろうか。力量の… 乱歩賞「老虎残夢」武闘あり恋愛ありの本格ミステリー 今年の江戸川乱歩賞を受賞した桃野雑派(ももの・ざっぱ)の長編小説「老虎残夢(ろうこざんむ)」(講談社)を面白く読んだ。南宋… 「村上春樹ライブラリー」早大キャンパス内の“異界” ◇村上春樹ライブラリーを訪ねる(1) 秋の一日、オープンしたばかりの早稲田大学国際文学館(東京都新宿区、早稲田大学キャンパ… 直木賞「テスカトリポカ」麻薬と臓器そしてアステカ神 直木賞を受賞した佐藤究(さとう・きわむ)の「テスカトリポカ」(KADOKAWA)はスケールの大きな長編小説だ。国際社会を舞… 芥川賞「彼岸花が咲く島」漂着した少女の“成長物語” このほど芥川賞を受賞した李琴峰(り・ことみ)「彼岸花が咲く島」(文芸春秋)は風変わりな小説だ。日本と台湾の間にあるらしい架… 桐野夏生「インドラネット」ナゾの冒険旅に読者を誘う 主人公が謎を生きるというタイプの小説がある。読者も、主人公と一緒に謎の中をさまようことになる。典型的なのは、ハードボイルド… 引きこもりと家族の孤立を描く林真理子「小説8050」 「8050問題」がよく話題になる。「ハチマルゴーマル」と読む。80歳代の親と、50歳代の引きこもりの子どもをめぐる問題だ。… 本屋大賞「52ヘルツのクジラたち」が描く“孤独の先” 毎年、本屋大賞の受賞作を読むのが楽しみだ。全国の本屋さんたちが投票で選ぶ文学賞で、現代の切実なテーマを扱っていることが多い… カズオ・イシグロ「クララとお日さま」AIが心を持つ日 AI(人工知能)に心はあるのだろうか。人間とAIを区別するものとは一体、何なのだろうか。私たちはAIとどのようにつき合って… 直木賞「心淋し川」西條奈加が描く江戸庶民の喜怒哀楽 ある限定された空間で人間模様を楽しむこと。時代小説の魅力は何といっても、それに尽きる。多くは江戸時代が舞台である。場所はい… 芥川賞「推し、燃ゆ」女子高生が“のめり込んだ”日々 「推し」という言葉を初めて聞いたのはいつのことだったか。ネットなどで調べると、もともとは「推しメン」の略で、「アイドルグル… 柳美里「JR上野駅公園口」を読み解く三つのカギ この数年、日本の女性作家が欧米で高く評価されている。ノーベル文学賞の候補に目されている多和田葉子と小川洋子をはじめ、川上未… 切なくて前向き「君の膵臓をたべたい」280万部の秘密 住野よるの長編小説「君の膵臓(すいぞう)をたべたい」(略してキミスイ、双葉文庫)が売れ続けている。2015年に単行本が刊行… 生身の「人間・孔子」を描いた宮城谷昌光を読む贅沢 宮城谷昌光の長編小説の最新刊「孔丘」(文芸春秋)を読んでいる間、はるかに遠い中国の古代を旅しているような気分だった。独特な… “倍返し”若き半沢直樹が動く「アルルカンと道化師」 1人の人間が生涯に体験できることは、たかがしれている。職業も、恋愛も、家族関係も、趣味も、ごく限られたことしか経験できずに… 直木賞「少年と犬」孤独な人々と“守り神”の物語 お盆に東京西郊の寺にお参りをした。愛犬たちの納骨をしていて、年に何度か訪れる。故郷から離れて暮らしていることもあって、父母… 芥川賞「破局」勝ち組男子の空っぽな心と2人の女性 現代の若者が心に抱いている虚無感とはどういうものなのだろうか。芥川賞を受賞した遠野遥「破局」(河出書房新社)を読みながら、… “短編の名手”村上春樹 人生振り返る「一人称単数」 村上春樹の6年ぶりの短編集「一人称単数」(文芸春秋)を面白く読んだ。すでに70歳代に入った村上の人生を振り返っての感慨や、… マルチな文化の水先案内人が論じる「日本文化の核心」 日本文化の特質とは何か。繰り返し考えられてきた問いだろう。グローバル化が進む現代ではとりわけ、多くの人が直面する課題だ。文… 本屋大賞「流浪の月」魂が響き合うような男女の関わり 100人のうち99人がAと考えている。でも、1人はBと考えていて、実はそこに真実があるように見える。これは小説というものが… 村上龍の最新作「MISSING」が突く日本社会の“盲点” 村上龍のデビュー作「限りなく透明に近いブルー」(1976年)は、「ロックとファックの世代」と評され、若者たちが薬物に酔った… “樺太に生きる民族”に光をあてた直木賞「熱源」 歴史を眺める時には、さまざまな視点がある。そこから、いろいろな歴史小説が生まれる。 権力のありようを探るのもその一つだ。た… 「21 Lessons」が問う“幻滅・雇用・戦争・神”そして 私たちは激しく動いている状況を生きている。その実感は多くの人が持っているだろう。では、せんじ詰めれば、どのような時代なのか… 「このミス」国内1位作品 若き“女性霊媒師”の魅力 書店に並んでいる数多くの新刊本を見て、一体どれを読んだらいいのか、と迷う人は少なくないだろう。芥川賞・直木賞や本屋大賞に注… 大沢在昌「新宿鮫Ⅺ」警察小説の魅力を余すところなく 警察小説が相変わらず人気だ。その魅力はいくつかある。組織の中で個人はどうあるべきかという問題がギリギリのところで描かれるし… 小川洋子「小箱」子供たちの魂と共生する不思議な世界 小川洋子は世界の片隅に隠れている小さな物語を探してきて、私たちに教えてくれる作家だ。そこには、忘れられた者、虐げられた者、… 又吉作品が“グダグダな思考”の中で問う「人間」とは 又吉直樹の新作長編「人間」(毎日新聞出版)は読者にさまざまなことを考えさせる小説だ。登場人物たちが対話したり、議論したり、… 高村薫「我らが少女A」現代人の脳内を拡大鏡でのぞく 高村薫の新作長編小説「我らが少女A」(毎日新聞出版)はしみじみと面白い一冊だ。さまざまな人間模様を楽しみながら、時の流れに… 芥川賞「むらさきのスカートの女」迷宮のような読後感 芥川賞を受賞した今村夏子「むらさきのスカートの女」(朝日新聞出版)は二つのきわだった特徴を持つ小説だ。一つはきわめて奇妙な… 朝倉かすみ「平場の月」50代男女のはかない恋愛小説 50歳になったころからだろうか。あと何年生きられるのだろうと考えるようになった。急に中学や高校の同窓会の誘いが増えた。みん… 本屋大賞「そして、バトンは渡された」幸せな家族とは 詩人・小説家の辻井喬が講演で近代文学と現代文学の違いを語るのを聞いたことがある。1990年代前半のことだ。 「個人が共同体… “日本国の象徴”の意味を解き明かす「平成の天皇」論 新聞の優れた政治記事や政治コラムは、読み物としても実に面白い。広義の文学のテーマとして、いつの時代も変わらない魅力があるの… 「82年生まれ、キム・ジヨン」女性への差別と無理解 「82年生まれ、キム・ジヨン」(斎藤真理子訳、筑摩書房)は韓国の女性作家チョ・ナムジュによる小説だ。韓国で100万部を突破… 現代人の孤独を丁寧に描いた芥川賞「ニムロッド」 芥川賞を受賞した上田岳弘の「ニムロッド」(講談社)を面白く読んだ。この時代を生きていて感じる孤独やむなしさ、切なさが鮮やか… 直木賞「宝島」で豊かに描かれた沖縄の明るさと闇 日本文学が不振をかこっていた1990年代、ジャーナリズムはさまざまなところで新しい才能を求めていた。貧血気味の文壇を救った… 吉田修一「国宝」人間の善悪とそこを突き抜けた何か 平成期の日本文学を振り返った時、「文学不振」だの「出版不況」だのといった世評とは違って、意外な豊穣(ほうじょう)の時代だっ… 生きづらさを論じる東工大リベラルアーツの「平成論」 平成とはどういう時代だったのか。そんな問いかけがいろいろなメディアで目立つようになった。元号で時代を考えるのは日本人の心情… 平野啓一郎「ある男」良質の探偵小説のような楽しみ方 平野啓一郎の「ある男」(文芸春秋)は質のいい探偵小説のような楽しみ方ができる長編小説だ。謎解きの面白さがあり、人間模様が味… SNSの茶番劇 本谷有希子「静かに、ねぇ、静かに」 インターネットの最も厄介な性格は、それによってできるバーチャルな空間が、人間にとってけっこう居心地のいいことである。ソーシ… ありふれた定年後の夫婦に迫る危機 井上荒野の長編 オレオレ詐欺(振り込め詐欺)の被害が、いつまでも後を絶たない。これはいくつかのことの顕著な表れだと思う。 たとえば、お金に… 芥川賞「送り火」 理不尽な暴力の向こう側に何が 街を歩いていても、満員の通勤電車で立っていても、夜に居酒屋で酒を飲んでいても、突然に暴力が噴出する予感にかられることがある… “脳トレ”川島教授が警鐘「スマホが学力を破壊する」 私たちはスマートフォンとの付き合い方を徹底的に見つめ直した方がいい時期にきているのではないだろうか。この10年間に、スマホ… 菅野仁「友だち幻想」傷つけあうことを避けるヒント 子どもが「ムカつくやつがいる」と漏らしたときに、私たちには2種類の答え方がある。ひとつは「彼にもいいところがあるだろう。仲… 自分の命をかけて行動した「大西郷」とは何者か NHK大河ドラマの影響で西郷隆盛がブームになっているが、この人ほどわかりにくい人物は日本史上でも珍しいのではないか。大久保… 私立探偵・沢崎が14年ぶり登場「それまでの明日」 原尞(はら・りょう)の14年ぶりの小説「それまでの明日」(早川書房)を読んだ。手に汗握る、というのとは少し違う。展開はめま… AIに勝つには「読解力が大切」だと教えてくれる本 枠組みが限られた課題しかできない。柔軟な判断力が求められる仕事が苦手。読解問題が弱い。常識が理解できない。 これだけを聞か… 「おらおらでひとりいぐも」読者を静かに力づける一冊 平日の午後。東京都内の街には、高齢の男女があふれている。公立図書館、カフェ店、公園のベンチ、病院の待合室、ショッピングセン… 瀬戸内寂聴が「いのち」で描く女性作家との深い交わり 新聞などで文学者をめぐるニュース報道をするには、いくつかのタイミングがある。新作の発表時や文学賞を受賞した時はその代表的な… 「漫画 君たちはどう生きるか」が問う“人間の強さ” 今に限ったことではないのかもしれないが、このところ、若い人たちと話していると物事のありようを考えたいとか、生きる意味を見つ… カズオ・イシグロ「日の名残り」は物語の楽しみ満載 文庫本のベストセラーの上位にカズオ・イシグロの作品が多く入っている。ノーベル文学賞の受賞が決まってからの現象で、単なるブー… “現代”をからかう恋愛小説 ビートたけし「アナログ」 トリオ漫才というと「かしまし娘」や「レツゴー三匹」を思い出す。3人で織りなすお笑いは、コンビ漫才とはまた違ったダイナミック… 勉強を深めて“バカ”に変身するガイド本「勉強の哲学」 何のために勉強をするのか。これは多くの人が自問することではないだろうか。めざす学校に合格するためとか、ある資格を取るためと… 美しくて壮絶な愛情をつづった直木賞「月の満ち欠け」 直木賞を受賞した佐藤正午の「月の満ち欠け」(岩波書店)は不気味で、少し怖い長編小説だ。そして、多くの神秘的な物語がそうであ… 国民作家・山崎豊子が描いた「大義に殉じた男」の奥底 山崎豊子はきわめて魅力的な小説家だ。司馬遼太郎と並ぶ国民作家といってもいいだろう。 国民作家とは、国民に広く愛されながら、… 又吉直樹の小説第2作「劇場」をめぐる三つの疑問 日本文学はこれまでにあまたの恋愛小説を生み出してきた。それらは同時代の人々の思いに形を与えてきた。恋愛は人々が心の底で求め… 池上彰、佐藤優氏が知の源泉を披露する「最強の読み方」 この欄で池上彰や佐藤優の本を取り上げたいと思っていた。書店に行けば、この2人の著書が平積みになっているし、中身もなるほど、… フォーサイスが自伝「アウトサイダー」で描く数奇な人生 私は自分を元気づけてくれる本が好きだ。私に力を与えてくれる本には、いろいろな種類があるが、したたかな人物が社会のあり方や人… 音楽の美しさと奥深さを描く恩田陸「蜜蜂と遠雷」 芸術家や表現者を描いた小説がこのところ目立つ。歴史時代小説では絵師を描いた長編の出版が相次いでいるし、又吉直樹の芥川賞受賞… ネタバレ注意!村上春樹「騎士団長殺し」は優れたホラー 前半とても面白くて夢中になって読み進んだのだけれど、途中から(第2部の真ん中あたりから)、やや物足りなさを感じた。村上春樹… 記者時代の司馬遼太郎が「新論語」で描いたロマンと現実 すまじきものは宮仕え、とはよくいったものだ。できれば、組織に属さず自分の才覚一本で生きていきたい、そう考えるサラリーマンは… 歴史を考える楽しみにあふれた「げんきな日本論」 教養の大切さを説く声をよく聞くが、それでは一体、教養とは何なのか。一つの答えをとりあえずいえば、歴史を知ることではないか。… 善と悪のおぼろな境目を描く吉田修一「犯罪小説集」 犯罪小説の成否を分けるものの一つは、加害者(犯人)の人物像の描かれ方にどれだけ説得力があるかだ。「心の闇」で済ませてしまう… 歴史人口学者トッドが予言「非エリートの反乱は拡大」 英国が国民投票によって欧州連合(EU)からの離脱を決めた時、目に触れるメディアの多くは経済危機や株価の下落を報道した。何か… カフカ、ノルウェイ…村上春樹おすすめ3作品 2016年のノーベル文学賞が13日発表され、アメリカの歌手、ボブ・ディランさん(75)に授与されることが決まりました。歌手… 還暦前おじさんの欲と金と焦り 桐野夏生「猿の見る夢」 還暦が近づくと、男は来し方行く末を考える。自分の人生は何だったのか。やり残していることは何か。これから、何を楽しみに生きて… “そこでしか生きられない”安心と切なさ「コンビニ人間」 コンビニにはどこか懐かしさが漂っている。近くにあると安心するし、ついつい頼りにしてしまう。 夜中にはそこだけ明るく輝いてい… 太宰と出会った又吉直樹の文学随筆「夜を乗り越える」 又吉直樹の「火花」が昨夏、芥川賞を受賞したのは、さまざまな意味でよかった。受賞作の書評はこの欄で書いたので繰り返さない。若… 「会長 島耕作」が挑む財界の悪弊と経済の超難問 マンガの楽しみにはいろいろある。そのうちの一つが、絵と言葉で物語を楽しみながら知識を得たり、社会や人生の問題について考えた… 古都を包む光の正体に迫る「京都ぎらい」 井上章一の「京都ぎらい」(朝日新書)は、京都について語ることを通して、日本人の性向や歴史にまで触れる一冊だ。2016年の新… ラーメン好き「ナルト」と村上春樹が描く人物の共通項 前から気になっていた岸本斉史「NARUTO −ナルト−」(集英社)を読了した。全72巻。2カ月余かかった。国内はもちろん、… 官僚的なるものとの対決 「天才」角栄の魅力を描く 西郷隆盛、乃木希典、田中角栄。戦後を代表する思想家、吉本隆明が日本の近代史を考えるうえで、最も重要な人物として挙げたのが、… 直木賞「つまをめとらば」が描く、女という現実 男は自意識にからめ捕られやすい。あれこれ考えて、身動きできなくなってしまう。自意識というのは底なし沼で、他者が見えなくなる… 生きる意味を問いかける白石一文「光のない海」 白石一文の「光のない海」(集英社)は友人に薦めたくなる長編小説だ。このサイトでは、大人の読者に読んでほしい本を選んでいるの… このミス1位!「王とサーカス」が問う言葉の本質 メディアというものを考える時に、必ず紹介する言葉が二つある。 ひとつはある落語家が言った「子供のころ、新聞を熱心に読んでい… 食べることで救われる「孤独のグルメ2」 魅力的なマンガに出会いたいといつも思っている。しかし、それは意外に難しい。書評で興味をひかれても、書店で題名が思い出せなか… ウエルベックが描く「自由」と「服従」の背中合わせ フランスの現代小説に疎い私が、ミシェル・ウエルベック「服従」(大塚桃訳、河出書房新社)を読んだのは、評判に気をひかれたから… カフカ、ノルウェイ…村上春樹がわかる3作品 ノーベル文学賞は今年も村上春樹を選ばなかった。残念だが、毎年、10月の第2木曜日にドキドキすること自体、幸せなことだ。 と… 「英語公用化」ってアホちゃいますか!? 施光恒「英語化は愚民化」(集英社新書) 幼稚園や小学校から英語を学ばせる。高校の英語の授業では英語しか使わない。大学の授業の… 直木賞「流」が20年に1度の傑作と称賛されるわけ 人間が生きていくよりどころとは何だろう。家族だろうか。仕事だろうか。民族や国を挙げる人も世界にはいるだろう。イデオロギーや… 「村上さんのところ」で知る村上春樹的生き方 村上春樹は接するのが極めて難しい作家だ。長年、文芸記者をしたが、こういう書き手は現在の日本では他にいない。容易に取材に応じ… ピース又吉「火花」が問う、笑いの本質 お笑いコンビ「ピース」の又吉直樹さん(35)のベストセラー小説「火花」(文芸春秋刊)が芥川賞候補になった。(編集部注;「火…