
青春小説の系譜
鶴谷真 / 毎日新聞学芸部記者
青春小説は40代、50代になって読み返してこそ輝くもの。毎日新聞学芸部で純文学を担当する新進気鋭の記者が、「青春小説の系譜」をつづります。
連載記事 32件
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福島在住の僧侶作家が描く原発事故と男女の結びつき
青春小説の系譜
阿武隈高地の西裾に抱かれた福島県三春町の福聚寺(ふくじゅうじ)住職にして芥川賞作家の玄侑宗久(げんゆう・そうきゅう)さんの…
2018年3月9日
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女性の怖さを描いた芥川賞候補作の“不気味な読後感”
青春小説の系譜
テーマは世代の断絶、あるいは女性の怖さ、そういったものだろうか。木村紅美(くみ)さんの「雪子さんの足音」(講談社)である。…
2018年2月9日
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柳美里「ゴールドラッシュ」14歳少年の混乱の果て
青春小説の系譜
主人公の「少年」は14歳の中学2年生だ。「少年」の一部分はあまりにも早く大人になっており、一方で著しく幼いままの部分も多い…
2018年1月12日
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社会の切っ先に迫るイシグロ作「わたしを離さないで」
青春小説の系譜
日系英国人の作家、カズオ・イシグロさんに今年のノーベル文学賞が授与されると決まり、10日にスウェーデン・ストックホルムで授…
2017年12月8日
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林真理子「葡萄が目にしみる」思春期の真っすぐな思い
青春小説の系譜
やや太り気味で、パッとしない容姿の乃里子(のりこ)は葡萄(ぶどう)農家の娘。その「弘明館(こうめいかん)高校」時代の青春を…
2017年11月10日
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はあちゅう初の小説集に登場する「清々しい」女性たち
青春小説の系譜
ツイッターのフォロワーが15万人を超える人気ブロガー、はあちゅう(女性、筆名)さんが7編の短編から成る初の小説集「通りすが…
2017年10月13日
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“田舎女子”のグロい生態を描く「ここは退屈迎えに来て」
青春小説の系譜
驚いた。地方都市--本書の登場人物たちの言い方だと「田舎」--に住む若い女性たちの内面と行動をかくもリアルに読ませてくれる…
2017年9月8日
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8月9日の長崎を描いた芥川賞作品「祭りの場」
青春小説の系譜
14歳の少女が見た長崎原爆を描く小説が、林京子さんの「祭りの場」だ。林さんの実体験をつづったものである。被爆から30年を経…
2017年8月11日
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40代を迎えた団塊ジュニア“1995年の青春”の輝き
青春小説の系譜
この夏の初めに刊行された恋愛小説「ボクたちはみんな大人になれなかった」(新潮社)が、売れに売れている。ある男が、青春時代だ…
2017年7月14日
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世界滅亡の危機と闘う家族の物語「サマーウォーズ」
青春小説の系譜
時は7月終わりの夏休み、舞台は長野県上田市の旧家・陣内(じんのうち)家。16代当主であるおばあちゃんの90歳の誕生日を祝う…
2017年6月9日
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311万部芥川賞「火花」に続く又吉さん第2作は「劇場」
青春小説の系譜
発売前に情報を小出しにすることでファンの飢餓感をあおる商法はよくある。だが小説の世界で、タイトルや初版部数が小刻みに発表さ…
2017年5月12日
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井上ひさしの原点「青葉繁れる」の輝きと戦争の記憶
青春小説の系譜
東北一のバンカラな名門男子高校を舞台に、主人公の稔たち落ちこぼれ4人組と東京からの転校生の俊介、計5人の3年生が巻き起こす…
2017年4月14日
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不可逆の青春を優しく描く小川洋子「シュガータイム」
青春小説の系譜
現代日本文学をリードし、多くの読者をもつ作家、小川洋子さんが初めて書いた長編小説が「シュガータイム」だ。1991年2月に刊…
2017年3月10日
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浮遊する「ぼく」の静かな青春 芥川賞「しんせかい」
青春小説の系譜
先日選考会があった第156回芥川賞に輝いたのが、「王道の青春小説として面白い」とたたえられた、山下澄人さんの「しんせかい」…
2017年2月10日
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「友情が武器」大人と戦う少女たちの希望と絶望
青春小説の系譜
◇桜庭一樹「砂糖菓子の弾丸は撃ちぬけない」 少女漫画のようにかわいかったり美しかったりするキャラクターが活躍する一方で、実…
2017年1月13日
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「世界を変えたい」反戦高校生が生きた半世紀の重さ
青春小説の系譜
◇盛田隆二「いつの日も泉は湧いている」 排外主義と大衆迎合。自分と価値観を同じくする者の言い分だけを聞き、他は「偏向」と称…
2016年12月9日
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笑いと涙と青春の真実 吉田修一「横道世之介」
青春小説の系譜
吉田修一さんの「横道世之介」は、青春小説の新たな金字塔を打ち立てた。長崎から上京して大学生活をスタートさせた横道世之介の1…
2016年11月11日
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近代的自我で世界を凝視した三四郎、そして漱石
青春小説の系譜
何を今さらと言われてしまいそうだが、文豪・夏目漱石(1867〜1916年)の「三四郎」である。 熊本の高等学校(旧制第五高…
2016年10月14日
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かけがえのない仲間をたたえる物語「くちびるに歌を」
青春小説の系譜
生身の体を楽器とし、その集合体のチームワークでもって、一度切りの奇跡の歌声を目指す闘いに引き込まれる。合唱に打ち込む中学3…
2016年9月9日
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山田詠美「ぼくは勉強ができない」は大人の教科書だ
青春小説の系譜
「自分探し」とあまり言われなくなった。今では、否定的ニュアンスがこもる言葉だろう。あるべき自分を夢想するばかりで、現実から…
2016年8月12日
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自己を投影した清張文学の核「或る『小倉日記』伝」
青春小説の系譜
松本清張(1909〜92年)が1952年、文芸誌「三田文学」に発表し、翌53年に芥川賞を受賞したのが「或る『小倉日記』伝」…
2016年7月8日
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22歳島田雅彦が描いた“サヨク”と80年代リアル
青春小説の系譜
◇芥川賞候補作「優しいサヨクのための嬉遊曲」 人の生き方の大まかな分類のひとつに、革新と保守があろう。革新の政治的スタンス…
2016年6月10日
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あさのあつこ「ランナー」にあふれる若さと疾走感
青春小説の系譜
大ベストセラー「バッテリー」で知られるあさのあつこさんが、陸上の長距離走者を主人公に据えた小説が「ランナー」(2007年)…
2016年5月13日
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中上健次「十九歳の地図」が描いた屈折と野望
青春小説の系譜
<僕は十九歳だった。予備校生だった>。熱烈なファンに読み継がれている中上健次(1946〜92年)の出世作が、73年に文芸誌…
2016年4月8日
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煩悩も知性も青春の妙味「赤頭巾ちゃん気をつけて」
青春小説の系譜
歌は世につれ世は歌につれ。小説はどうだろう。庄司薫さん「赤頭巾ちゃん気をつけて」である。 1969(昭和44)年に発表され…
2016年3月11日
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大江健三郎「セヴンティーン」こじらせ10代のパンク
青春小説の系譜
1960(昭和35)年10月12日午後3時ごろ、浅沼稲次郎・社会党委員長が、東京・日比谷公会堂で演説中に右翼の少年に刺殺さ…
2016年2月12日
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朝井リョウ「桐島、部活やめるってよ」の揺らぎと輝き
青春小説の系譜
田舎、といっても、そこそこの地方都市に立地すると思われる県立高校を舞台に、2年生たちの晩秋の日常を描くのが朝井リョウ「桐島…
2016年1月15日
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村上龍「限りなく透明に近いブルー」の刹那と叙情
青春小説の系譜
「ショッキングな芥川賞作家が誕生」「麻薬とロックとフリーセックスにあけくれる青年たちの生活を赤裸々にえがいた」−−。 毎日…
2015年12月11日
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綿矢りさ「蹴りたい背中」敏感すぎる思春期センサー
青春小説の系譜
今夏の又吉直樹の芥川賞受賞は社会現象になった。それ以前では、2004年に同時受賞した当時19歳の綿矢りさ「蹴りたい背中」(…
2015年11月13日
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伊坂幸太郎「砂漠」 仙台で出会う“あの日の自分”
青春小説の系譜
青春時代とは恥ずかしい日々だと思う。少なくとも私はあまり思い出したくない。九州の国立大学学生だった当時、周りの大人たちがこ…
2015年10月9日
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村上春樹「ノルウェイの森」 死と生のはかなさ
青春小説の系譜
「僕」は直子に一緒に暮らそうと誘う。<直子は僕の腕にもっとぴったりと身を寄せた。「そうすることができたら素敵でしょうね」と…
2015年9月11日
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宮本輝「青が散る」の残酷すぎるラスト
青春小説の系譜
「太宰治や三島由紀夫を読んだころを思い出しましてねえ」。50代半ばの男性銀行員は小さく笑い、「火花」を手に取った。お笑い芸…
2015年8月14日