社会・カルチャー戦国武将の危機管理

19歳家康が桶狭間で見せた退却の作法

小和田哲男 / 静岡大学名誉教授

 松平元康、すなわちのちの徳川家康は、永禄3年(1560年)5月19日の桶狭間の戦い当日、尾張の大高城(名古屋市緑区大高町)にいた。元康は前日、今川軍の先鋒(せんぽう)として大高城の兵糧入れをし、19日未明の鷲津砦(とりで)を落とす戦いにも加わり、あとは今川義元本隊の到着を待つだけであった。

 ところが、予定の時刻になっても義元の姿はみえず、そのうちに「途中、桶狭間のあたりで、義元様は織田信長の軍勢の奇襲を受けた模様」といううわさが流れてきた。元康もそれを耳にしたが、「それは敵の謀略だ」と相手にしなかった。たしかに、当時、そうしたうそのうわさを流して敵をかく乱することは、戦略としてよくとられていたからである。

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小和田哲男

小和田哲男

静岡大学名誉教授

戦国大名・今川氏のお膝元で、徳川家康の隠居先でもあった静岡市で1944年に生まれる。72年、早稲田大学大学院文学研究科博士課程修了。専門は日本中世史。戦国時代史研究の第一人者として知られ、歴史番組でおなじみの顔。趣味は「城めぐり」で、公益財団法人「日本城郭協会」の理事長も務める。主な著書に「戦国の群像」(2009年、学研新書)、「黒田官兵衛 智謀の戦国軍師」(13年、平凡社新書)。公式サイト https://office-owada.com

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