街の文化漂う 秘蔵の宿 フォロー

名作ドラマの記憶 学士会館(東京) 9936円〜

稲葉なおと・紀行作家、一級建築士

 まだこの建物が学士会員専用倶楽部だった時以来、2度目の宿泊だった。あらためて実感したのは、そのロケーションのよさ。東京駅まで1キロあまりの至近距離。桜の名所・千鳥ケ淵、名建築の美術館・国立近代美術館、そして武道館も徒歩圏内だ。

 14時のチェックインにはまだ早いので、荷物をクロークに預けて出かけようとしたら、係の女性から声がかかった。部屋の準備が整いましたらお荷物はお部屋のほうに運んでおきます、と。館内には、ホテルを思わせるサービスや施設と、格式ある会員専用倶楽部時代の名残が共存する。和・洋・中のレストラン、そして理髪店や談話室がそろう。行き交うひとには、ループタイやアスコットタイを締めた、いかにも学識のありそうな老紳士が目立つ。深夜0時が門限というのも倶楽部時代からのものだ。

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紀行作家、一級建築士

1959年、東京都生まれ。東京工業大学建築学科卒。400軒以上の名建築の宿を宿泊・取材。旅行記、小説、児童文学、写真集を発表している。現在も長編小説を雑誌「ダンスビュウ」に連載中。第10回JTB紀行文学大賞奨励賞受賞。主な著書に「匠たちの名旅館」など。近著に「モデルルームをじっくり見る人ほど『欠陥マンション』をつかみやすい」(小学館)。公式サイトでお勧めホテル、名建築の写真を多数公開中 http://www.naotoinaba.com (顔写真の撮影は寺崎誠三さん)