対談するユーグレナの出雲充社長(左)とリバネスの丸幸弘CEO=東京都港区で長谷川直亮撮影
対談するユーグレナの出雲充社長(左)とリバネスの丸幸弘CEO=東京都港区で長谷川直亮撮影

IT・テクノロジー躍動する科学ベンチャー

科学をビジネスに育てる「コミュニケーター」という役割

丸幸弘 / 株式会社リバネス最高経営責任者

対談:ユーグレナ出雲社長×リバネス丸CEO(3)

 異業種が連携して世界に打って出るためのコア技術を持つサイエンスベンチャーが、日本で育まれつつある。リバネスの丸幸弘・最高経営責任者(CEO)は「もう一つのピースが必要だ」という。ユーグレナ出雲充社長との対談3回目は、サイエンスとビジネスを融合させる「コミュニケーター」の役割について盛り上がった。【構成・田中学】

 ◆リバネス丸幸弘CEO サイエンスやテクノロジーをコア技術にしたベンチャーが育つ土壌が日本にはできつつあります。その土壌を豊かにするためには、もう一つのピースが欠かせません。それはサイエンスとビジネスを融合させる「コミュニケーター」の存在です。

 ◆ユーグレナ出雲充社長 私にとっては丸さんがそれに当たりますね。経営には技術だけでなく、商品・サービス化のアイデアや人材ネットワークなど広範な知識や情報が必要ですから。現に、当社はバングラデシュに事務所を置いていますが、現地の事務所長を紹介してくれたのも丸さんでした。

国内の修士・博士ネットワークを活用せよ

 ◆丸 国内外に研究者ネットワークがあり、そこを当たった結果です。2000年ごろから、国内では大学院の修士・博士課程を終えた人材の働く場がなくなる「ポスドク問題」が起こり始めました。今も解消されていません。これが私が起業するきっかけの一つでもあるのですが、優秀な研究者が思う存分能力を発揮できる場を作りたかったんです。

 ◆出雲 リバネスの社員はほぼ全員が修士か博士号を取得した人たちですよね。

 ◆丸 そうです、私も含めて(笑い)。約50人の社員が異なる研究分野を持っています。日々全員が有望なサイエンスやテクノロジー情報、知識を集め、新ビジネスを探す大企業、ベンチャー企業とともに研究開発を進めています。

ユーグレナの出雲充社長
ユーグレナの出雲充社長

 ◆出雲 一見、リバネスは何をしている会社かわかりません。

 ◆丸 ポスドク問題が起こったころ、子供たちの理科離れも問題になっていました。その解決のために、01年に出前実験教室を始めたのが当社の始まりです。理系人材を抱える企業がこの取り組みに協力してくれて、協力企業は今では200社近くになりました。このつながりが多くの知識をもたらしてくれます。私たちは自社を「知識プラットフォーム」と位置づけていて、サイエンスやテクノロジーをコアにビジネスをしたい企業をサポートしているんです。

 ◆出雲 丸さんは簡単に言いますが、どうやって10年以上も続けてきたんですか。

 ◆丸 企業から課題が持ち込まれた時、まず「何でもできます」と言います。ただ当社だけでは解決できないので、研究者とチームを組んで解決策を探ります。その結果を企業に届け、解決できれば、それがビジネスになる。その繰り返しです。結果的に、これまでになかったビジネスモデルができたと思いますが、当社が何をしているかわかりにくい部分でもあります(笑い)。

リバネスの丸幸弘CEO
リバネスの丸幸弘CEO

科学者の眠れる情熱を引き出す

 ◆出雲 コミュニケーターの力が問われるところですね。コミュニケーターとして必要な能力は。

 ◆丸 一番大切なのは、科学者が何に対して情熱を燃やしているか引き出すことです。近年、国が科学者を支援する研究費が大型化し、政府の重点分野に配分されやすい傾向があります。研究費を得るため、政府方針に沿った研究をする科学者が多いのですが、実は他の分野で技術と知識を生かしたいと思っている科学者は多い。それを引き出し、課題解決とビジネスにつなぐのがコミュニケーターに必要な能力ですね。

 ◆出雲 もともと日本のサイエンスやテクノロジーのポテンシャルは高いですから、コミュニケーターが活躍すれば日本の科学技術分野の存在感を高めることができますね。

 ◆丸 コミュニケーターが増えれば、サイエンスベンチャーが増えます。結果的にポスドク問題も解消に向かうはずです。

 ◆出雲 ただ、このコミュニケーターという仕事は丸さんだからできるという面が大きいのではないですか。当社の場合、経営者である私がいなくても会社がうまく動いていくよう意識しているのですが。

 ◆丸 おそらく組織の形態の違いでしょうね。経営者はよく「自分がいなくても成り立つ組織を作る」と言うのですが、私は疑問に思います。当社は私がいなくても存在できますが、今は私がいるからこその形ができあがっている。社員個々人がそれぞれのネットワークを持って活躍する、それらを束ねているのがリバネスなんです。

 ◆出雲 大学の研究室のようですね。例えば、丸先生という人が研究室のトップなら、「丸研」と呼ばれます。その中で、先生の指導を仰ぎながら個々の学生が独自の研究を進める。

 ◆丸 そうですね。当社には今200近いテーマがあり、実際にそれらが動いていますから、まさに研究室の雰囲気に近いですね。

 <次回は7月2日掲載です>

(1)ミドリムシで上場したバイオベンチャーの野望

(2)日本の課題を解決するコア技術で世界に打って出る

(4)東京五輪2020年、ミドリムシで訪日外国人を驚かせる

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丸幸弘

丸幸弘

株式会社リバネス最高経営責任者

1978年神奈川県生まれ。東京大学大学院在学中の2002年6月にリバネスを設立。「最先端科学の出前実験教室」をビジネス化した。大学や地域に眠る経営資源や技術を組み合せて新事業のタネを生み出し、200以上のプロジェクトを進行させている。著書『世界を変えるビジネスは、たった1人の「熱」から生まれる。』(日本実業出版社)がある。

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