東京都内で=関口純撮影
東京都内で=関口純撮影

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スマホを街の修理店で直すと電波法違反?

北俊一 / 野村総合研究所上席コンサルタント

 画面にヒビの入ったスマホを使っている人をたまに見かける。修理に出す時間がないのか、修理費用が高いからしばらく我慢して使い、端末の割賦代金の支払い終了後に機種変更しようと考えているのだろうか。そんな人たちの頼もしい駆け込み寺として、街のケータイ修理屋さんが増えている。「iPhone修理」というキーワードで検索すれば一目瞭然だ。

あなたのスマホには「技適マーク」がついているはず

 画面が小さく、折りたたみ式が主流で、かつ防水機能が標準仕様であったフィーチャーフォン(いわゆるガラケー)とは違い、画面が大きくむき出しで、防水機能の無いiPhoneの普及と共に、破損や故障が増えているためだ。

 しかし、気をつけなければならないことがある。街のケータイ修理屋さんで修理した端末を使っていると、電波法違反に問われる可能性があるのだ。

 もちろん、ドコモショップにドコモのケータイを持ち込んで修理する場合や、iPhoneを、アップルストアや、カメラのキタムラ、ビックカメラなどのアップル正規サービスプロバイダーに持ち込んで修理する場合には何も問題ないことをお伝えしておく。

 まず初めに、あなたのケータイが「技適」を通っているかを確認してみよう。ガラケーや電池が取り外し可能なタイプのスマホをお持ちの人は、電池を取り外したところに張られているシールを見てほしい。

 iPhoneは、iOSのバージョンによって若干異なるが、「設定」→「一般」→「情報」→「法律に基づく情報」→「認証」を見てほしい。

 また、電池が外せないタイプのAndroid端末は「設定」→「端末」→「法的情報」→「認証」を見てほしい。

「技術基準適合証明」とは何か?

技術基準適合マーク
技術基準適合マーク

 そこには必ず、円で囲まれた中に郵便マークの入った“技適マーク”があるはずだ。もしこれがないとすれば、あなたは電波法違反に問われる可能性がある。

総務省の「電波利用ホームページ」

 「技術基準適合証明」、略して「技適」とは、総務大臣の登録を受けた「登録証明機関」が、携帯電話などの特定無線設備が、電波法の技術基準に適合しているかどうかの審査を行う制度である。

 携帯電話メーカーは、新たに製造・販売する端末を登録証明機関に持ち込み、電波法の技術基準に適合していることの審査を受ける。さらに、工場などで大量生産する上で、生産体制が工事設計に合致していることの審査を受ける。審査をパスすると「認証取扱業者」となり、端末に「技適マーク」を表示することができる。

勝手に改造したら50万円以下の罰金

 技適は、電波の出力を増強するなど、電波の「質」に著しく影響を及ぼすような「改造」を行えば、明らかに無効となる。

 電波法には「特定無線設備の変更の工事をした者は、総務省令で定める方法により、その表示を除去しなければならない」とある。すなわち、技適マークのついた機器を改造したら、表示を除去しなければならない。これを怠ると50万円以下の罰金刑に処される。

 さて、ここで問題となるのは、上記の「変更の工事」の内容である。特に「認証取扱業者」以外の者が、端末の「修理」を行った場合、技適は失効するのだろうか。

 これまでの電波法では、「認証取扱業者」、例えばパナソニックの端末であれば、パナソニック自身(及びパナソニックからの受託修理業者)による工事設計に合致した修理についてのみ規定しており、それ以外の第三者による修理については、何ら規定がない。街のケータイ修理屋さんでiPhoneを修理すると、修理の内容によっては、技適が失効する可能性は否定できない、と解釈される。

動き出した「登録修理業者制度」

 そこで、「登録修理業者制度」創設を盛り込んだ改正電波法と改正電気通信事業法が今年4月1日、施行された。

総務省「登録修理業者制度」ホームページ

 スマホの急速な普及に伴い、端末メーカー以外の修理業者が修理や部品交換をする事例が増えている。これに対応し、第三者であっても、修理の方法が適正で、かつ、修理した端末が技術基準に適合する業者については、総務大臣に登録することを可能とし、「変更の工事」に該当しない範囲の修理であれば技適が担保される、という制度だ。

 ただし、登録修理業者には、登録した修理方法書に修理を合致させること、検査記録の保存、修理したことの表示、改善命令、報告徴収・立ち入り検査を受け入れる義務などが課される。

 街のケータイ修理屋さんすべてが、コスト増となる可能性のある登録申請をするかどうかは分からない。申請しなかった場合はどうなるのか、「変更の工事」に該当しない修理の範囲はどこまでなのか、といった具体的な課題を、今後走りながら決めていくことになる。

 今後、登録修理業者が増加し、街のケータイ修理屋さんでも安心して修理できる時代が来るまでには、それなりの時間がかかる。消費者としては、当面の間、自分自身を守るためにも、端末メーカーのショップや正規の修理業者の利用、そして、今後順次現れる登録修理業者で修理することをお薦めする。

 <北俊一さんの連載コラム「最適メディアライフ」>

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北俊一

北俊一

野村総合研究所上席コンサルタント

1965年、横浜市生まれ。早稲田大学大学院理工学研究科修了。90年株式会社野村総合研究所入社。四半世紀にわたり、情報通信関連領域における調査・コンサルティング業務に従事。専門は、競争戦略、事業戦略、マーケティング戦略立案及び情報通信政策策定支援。総務省情報通信審議会専門委員。

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