青春小説の系譜

宮本輝「青が散る」の残酷すぎるラスト

鶴谷真・毎日新聞学芸部記者
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1983年、東京・新宿の雑踏
1983年、東京・新宿の雑踏

 「太宰治や三島由紀夫を読んだころを思い出しましてねえ」。50代半ばの男性銀行員は小さく笑い、「火花」を手に取った。お笑い芸人の又吉直樹さんが書き、7月に芥川賞に選ばれた小説だ。

 受賞決定の翌朝、私は東京・神田神保町の書店へ取材に出かけた。書店員は鼻息荒く、本を店頭に積み上げている。「火花」は、売れない若い芸人2人が、笑いの神髄を求めてもがいた日々を回想する青春小説だ。冒頭の銀行員はそうと知って気になっていたところへ、芥川賞受賞のニュースを聞き、出勤前に買いに来たのだという。

 青春小説は40代、50代になって読み返してこそ輝くのではないか、ふとそう思った。自らの「現在地」を…

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鶴谷真

毎日新聞学芸部記者

1974年、神戸市出身。2002年毎日新聞社に入社し、岡山支局、京都支局を経て08年に大阪本社学芸部。13年秋から東京本社学芸部。文学を担当している。