mineoブランドの端末「ルーチェ」。家電量販店などで買えるSIMフリー端末が少ないぶん、MVNOが積極的にラインアップを拡充させている
mineoブランドの端末「ルーチェ」。家電量販店などで買えるSIMフリー端末が少ないぶん、MVNOが積極的にラインアップを拡充させている

IT・テクノロジー知ってトクするモバイルライフ

KDDI回線を使う格安スマホのメリットとデメリットは?

石野純也 / ケータイジャーナリスト

 「格安スマホ」「格安SIM」で知られるMVNO(仮想移動体通信事業者)は、大手の通信事業者から回線を借りている。その借り先は、ほとんどが業界最大手のNTTドコモだ。

 理由は、回線を貸すための費用である「接続料」が、他社より安いため。今では差が縮まっているが、かつてはKDDIが2倍、ソフトバンクが3倍高い状況が続いていた。回線を貸すための体制も整っていたことから、ドコモに一極集中したという見方が強い。また、KDDIに比べ、ドコモの使う電波や周波数は、国際標準に近い。ドコモから回線を借りた方が海外メーカーから端末を調達しやすかったというのも、同社が選ばれる遠因だ。

ケイ・オプティコムの「マイネオ」は7万契約突破

 一方で、差別化のために、あえてKDDIの回線を選ぶMVNOも登場してきた。関西に拠点を構える、ケイ・オプティコムの「マイネオ(mineo)」がその先駆けだ。

 同社はKDDIから回線を借り、端末も自前のものを用意。接続料がドコモより高いKDDIを利用していることもあって、ドコモ系に比べるとやや料金は割高だったが、最近では十分他社に対抗できるプランを打ち出している。

 データ通信だけなら、500MBで700円。1GBが850円、3GBが980円、5GBが1580円という価格になっている。音声通話まで利用できる「デュアルタイプ」は、基本使用料としてデータ通信のみのプランに610円が上乗せされる仕組みだ(価格はすべて税抜き)。

mineoの料金プラン。500MBの容量から選択でき、最大5GBまで四つのプランがある
mineoの料金プラン。500MBの容量から選択でき、最大5GBまで四つのプランがある

 コストがドコモに比べて割高な中で、あえてKDDIから回線を借りるのは、LTEのエリアの広さに理由がある。KDDIは高速通信が可能な次世代通信規格「LTE」(Long Term Evolution、ロング ターム エボリューション)の開始にあたって、積極的にエリアを拡大し、実人口カバー率は99%を超えている。MVNOのエリアは基本的に、回線を借りる通信事業者と同じになるため、マイネオもこのメリットを受けられるのだ。

 こうした点が評価され、マイネオは今年5月に7万契約を突破。また、昨年12月には、2社目のKDDI系MVNOとして、KDDI自らが子会社を通してサービスを提供する「UQモバイル」も始まっている。

KDDI系に対応する端末が少ないことに注意

 ユーザーがKDDI系MVNOを利用する際には、ドコモ系と違った注意が必要になる。最大の差は、端末の選択肢が狭いこと。KDDI系は音声通話に「CDMA2000 1x」という通信規格を採用しているが、これはドコモやソフトバンクと異なるものだ。グローバルで見ても、アメリカや韓国などの一部通信事業者に採用が限られており、結果として対応する端末の種類が少ない。同じ端末をグローバルで展開しても、規模の経済を見込めないというのが、その理由だ。

 MVNOは端末もセット販売しているため、KDDI系を選ぶ際は、端末を一緒に購入しておいた方がいいだろう。ドコモ系と異なり、家電量販店で端末だけを気軽に買える状況にはなっていないからだ。また、MVNOのSIMカードは、そのMVNOが回線を借りる通信事業者の端末も認識する。この部分はKDDI系でも同じだ。そのため、中古店でKDDIの端末を買って、MVNOのSIMカードで使う選択肢もある。

 ただし、本家のKDDIが、昨年から音声通話の仕様を変え、LTE上でそのまま通話を行う「VoLTE」(ボイスオーバー ロング ターム エボリューション)を始めている。VoLTEに対応した端末は、先に挙げた「CDMA2000 1x」が利用できない。つまり、KDDI系MVNOで、KDDIの最新端末が利用できないのだ。

ドコモ系よりも依然価格は高め

 iPhoneもドコモ系MVNOとは挙動が異なっており、データ通信できないトラブルが続いていた。先月、ようやく技術的な問題が解決されたが、まだ通信状況が不安定なため、KDDI系の各社はiPhone利用を勧めていない。

 二つ目の注意点は、やはりドコモ系より価格が高くなりがちなこと。KDDI系の数が少なく、KDDIが回線を貸し出す際の接続料も、まだドコモより高いからだ。徐々に差は埋まりつつあるが、会社の数が多いドコモ系と比べ、選択肢は限られている。KDDI系を選択する際には、こうしたメリット、デメリットをてんびんにかけるようにしたい。

 <「知ってトクするモバイルライフ」は原則、毎週火曜日に更新します。次回は8月18日掲載です>

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石野純也

石野純也

ケータイジャーナリスト

1978年、静岡県生まれ。慶応義塾大学総合政策学部卒。2001年、宝島社に入社。当時急速に利用者数を伸ばしていた携帯電話関連のムック編集に携わる。05年には独立してフリーランスのジャーナリスト/ライターに転身。通信事業者、携帯電話メーカー、コンテンツプロバイダーなどを取材、幅広い媒体に原稿を執筆する。業界動向を記したビジネス書から、端末の解説書まで著書も多い。

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