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超巨大ビール会社ABインベブは「まるで投資会社」

永井隆・ジャーナリスト

 SABミラーを約13兆円で買収したアンハイザー・ブッシュ・インベブ(ABインベブ)の最高経営責任者(CEO)、カルロス・ブリト氏は、コストを徹底的に削減する経営者として知られている。買収した企業の人員削減や工場売却は日常茶飯事であり、利益を生み出して株主に貢献する企業体質を築き上げている。

質素なABインベブと、派手めなSABミラー

 日産のカルロス・ゴーン社長もコストカッターとして知られるが、1999年に日産に乗り込んだ際は、工場閉鎖を断行しながら、同時に中国進出や電気自動車(EV)開発などを水面下で実行していた。ブリト氏は、新事業や新市場開拓を企業の合併・買収(M&A)で実現させる経営が特徴で、ゴーン氏とはまったく手法が違う。

 合理的で倹約を好むブリト氏の考えが反映され、ABインベブもその経営方針と同様に、質素と倹約を尊ぶ社風だという。役員に個室はなく、派手な社内パーティーもない。役員は長距離移動に自家用ジェット機を使わず、民間機で移動する。

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ジャーナリスト

1958年群馬県桐生市生まれ。明治大学卒。東京タイムズ記者を経て、92年にフリージャーナリストとして独立。「サントリー対キリン」(日本経済新聞出版社)など著書多数。