記者会見で質問に答えるタカタの高田重久会長兼社長(中央)=2015年11月4日、梅村直承撮影
記者会見で質問に答えるタカタの高田重久会長兼社長(中央)=2015年11月4日、梅村直承撮影

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<欠陥エアバッグ>ホンダはなぜタカタを見限ったのか

編集部

巨額制裁金を科せられたタカタ(1)

 自動車部品大手タカタの欠陥エアバッグ問題で、11月3日、二つの大きな動きがあった。まず、米運輸省のタカタに対する制裁金の発表が引き金となった。米運輸省はタカタが自動車安全法に違反したとして、過去最高額の最大2億ドル(約240億円)の民事制裁金を科し、多発したエアバッグの事故の原因と指摘される硝酸アンモニウムを使ったエアバッグの生産・販売を段階的に止めるよう命じたのだ。

米運輸省の制裁金発表に、ホンダがすぐに反応

 エアバッグの多くをタカタから調達してきたホンダがすぐに反応した。事故原因究明に向けてタカタから提供された資料の一部に「虚偽報告」があったというのだ。ホンダは今後販売する新モデル車に、タカタ製の主要部品を使ったエアバッグを搭載しないと宣言した。両社は二人三脚でエアバッグを開発してきた歴史がある。そのホンダが、タカタのエアバッグに見切りをつけるという内容は、衝撃を持って受け止められた。

 タカタ製エアバッグは、作動時に異常な爆発が起こり、金属片が飛び散る欠陥が判明している。米国で7人が死亡し、米運輸省やホンダをはじめ各メーカー、そしてタカタが原因究明とリコール(回収・無償修理)を進めている。だからこそ、過去最高額の制裁金となったのだが、「虚偽報告」というのは尋常ではない。いったい何があったのか。

「タカタは欠陥を認めることを拒否していた」と断罪

 まず、米運輸省の発表を詳しく紹介しよう。発表文は、「自動車安全法に違反したタカタに、最大の民事制裁金を科す」との書きだしで始まる。「タカタは欠陥製品を造って売り、欠陥を認めることを拒否していた。すべての情報を米運輸省、顧客に提供することを怠り、消費者の利益を害した」と厳しく断罪する。

 さらに、「タカタは欠陥をようやく認めたものの、適時リコールの着手を怠った。米運輸省はタカタが恣意(しい)的で、不完全、不十分なデータを提出していた事実を認定した」と指摘した。そして、「タカタが問題のエアバッグ起動装置について製造を中止するスケジュールを監督する」ことを明らかにした。

険しい表情で記者の質問を聞くタカタの高田重久会長兼社長=2015年11月4日、梅村直承撮影
険しい表情で記者の質問を聞くタカタの高田重久会長兼社長=2015年11月4日、梅村直承撮影

 タカタのエアバッグは米国内で09年に死亡事故が起き、各国で相次いでリコールの対象となった。しかし、タカタは当初、エアバッグの事故の原因が製品の欠陥であることを認めようとせず、今年5月になって初めて欠陥を認めた。米国では1920万台の車に、問題のエアバッグが約2340万個搭載されているが、リコールが終わったのは440万個にすぎない。

数百万ページの書類の検証で、「虚偽」が判明

 一方、ホンダの発表によると、「ホンダはタカタ製エアバッグ起動装置に関する訴訟に関連し、数カ月にわたってタカタから提出された数百万ページの内部書類の検証をしてきた。この結果、タカタが起動装置のデータを誤って伝える、または不適切な報告を行っていたと思われる情報を認識した」と指摘した。

 さらに、「ホンダはすべての取引先が常に誠実に行動することを期待しており、タカタの行為に大変困惑している」と述べた。タカタの対応は不誠実だった、というのだ。

 具体的にはどんな対応か。毎日新聞5日朝刊の記事が詳しく報じている。それによると、タカタは原因究明を特定の方向に誘導しようとするデータ操作を行ったという。ホンダはそうした虚偽報告が見つかるごとに、米運輸省に通知したという。

 なぜデータが操作され、虚偽の報告内容になったか。ホンダは第三者による検証を求め、タカタはそれを受け入れたという。

 ホンダはこれと併せ、「全世界的に、新規開発中のホンダ車にはタカタ製エアバッグ起動装置を搭載しない」と発表した。さらに、リコールで交換する起動装置について、他のメーカーの製品を増やしており、「将来的には、タカタ以外から供給された起動装置のみでの交換が可能になる」ことも明らかにした。

タカタのエアバッグに「絶縁宣言」

 なぜホンダはタカタのエアバッグに「絶縁宣言」したのか。一つは、タカタがこの段階になってもなお、調査に対して、データ操作といった行為を続けていたことだ。そして、そんなタカタにお付き合いしていたら、ホンダ自身が米国で取り返しのつかない事態に陥ることを恐れたためだろう。

米上院の公聴会で証言を読み上げるタカタの清水博・品質保証本部長(左)と、リック・ショステック北米ホンダ上級副社長=米ワシントンで2014年11月20日、清水憲司撮影
米上院の公聴会で証言を読み上げるタカタの清水博・品質保証本部長(左)と、リック・ショステック北米ホンダ上級副社長=米ワシントンで2014年11月20日、清水憲司撮影

 昨年11月、米議会の公聴会で、ホンダは問題のエアバッグのリコールを全米で行うと表明した。ところが同じ公聴会でタカタは「データの裏付けがない」などと訴え、議員から激しく批判された。タカタが全米でのリコールにも応じたのは今年6月になってからだ。このとき、ホンダはいや応なく批判の矢面に立たされた。

 ホンダが11月4日に発表した2015年9月中間決算は最終(当期)利益が前年同期比14%増という好調な業績を示している。しかし、それは米国での好調な自動車販売に支えられている。ホンダもデータ操作に加担したなどと米国で受け止められて信用に傷がつき、車の販売に影響すれば、自らの屋台骨が揺らぎかねない。

 ホンダの発表を受け、タカタは「過去に試験結果報告の抜け漏れや不正確なものが含まれていたことを認識しており、深く反省し、真摯(しんし)に受け止めている」とのコメントを出したが、「あとの祭り」の印象を受ける。

 タカタは一般にはあまりなじみのない会社だ。次回、詳しく紹介しよう。

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編集部

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長く経済分野を取材してきた今沢真・毎日新聞論説委員を編集長にベテラン・若手編集者が経済・社会の最新情勢を追います。
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