2015年11月2日の毎日新聞くらしナビ面
2015年11月2日の毎日新聞くらしナビ面

社会・カルチャーメディア万華鏡

漫画ヒモザイルは休載したが専業主夫育成は「あり」

山田道子 / 毎日新聞紙面審査委員

 最近、気になった毎日新聞の記事が二つある。

 一つは、10月23日朝刊に載った「東村アキコさんの『ヒモザイル』休載」というミニ記事。同22日発売の講談社の月刊漫画誌に掲載予定だった漫画「ヒモザイル」が、東村さん自身の申し入れで休載になったという。

 記事などによると、実際にアシスタントの男性に家事能力を身につけてもらい、経済力があって恋人がいない女性と支えあう関係を作らせる、その過程を漫画で描こうとしたようだ。

 ウェブ上で一部を公開したところ、家事をこなす男性について、女性に金銭を貢がせる「ヒモ」と呼ぶ漫画の内容がツイッターなどで批判された。東村さんはツイッターで「本作は実際の出来事を元に描いていこうと考えていたので、皆様からの反響に向き合わずに創作を続けることはできないと判断しました」と説明している。

ヒモザイル休載を伝える毎日新聞記事
ヒモザイル休載を伝える毎日新聞記事

なお根強い「夫は外、妻は家庭」という意識

 「ヒモ」という言葉は刺激的かもしれないが、要するに専業主夫のことだ。女性が家事能力を磨いて金持ちの男性と結婚する女性版「ヒモザイル」は現実だ。時代に即してその逆を漫画で描こうとしたが、漫画家の仕事を裏方として支える「アシスタント」を見下している、配慮がない、というところに、ネットで批判が集まったようだ。

 ただ、私は「ヒモザイル」の呼び名はともかく、男性を家事や育児をする専業主夫として専門に育てる教育プログラムぐらいは「あり」ではないかと考える。

 政府が「すべての女性が輝く社会」を掲げざるを得ないほど日本の女性の進出が進まない背景には、専業主婦全盛の高度成長期に形成された「夫は外、妻は家庭」という性別役割分担意識がある。最近、ある女優さんが家事をこなす夫と離婚した時に「ヒモ亭主が愛想をつかされて捨てられた」という調子で週刊誌は報じた。そこに性別役割分担意識の根強さを感じた。

看板をかける安倍晋三首相(左)と有村治子女性活躍担当相(当時)=東京都千代田区の内閣府で2014年10月
看板をかける安倍晋三首相(左)と有村治子女性活躍担当相(当時)=東京都千代田区の内閣府で2014年10月

 そのような意識を壊すためには、専業主夫育成版「虎の穴」(特訓施設)が必要ではないかと考えるのだが、もう一つの記事を読んで確信した。11月2日朝刊のくらしナビ面に載った「理想の上司『イクボス』」という記事だ。

専業主夫育成は「あり」では!?

 育児などをしながら働ける職場作りのためには、部下のワーク・ライフ・バランスに配慮しながら仕事で結果を出し、自分も仕事と私生活を楽しむことができる上司「イク(育)ボス」が広がることが欠かせないというのだ。つまり仕事と家事などプライベートの両立に理解のある上司。

 イクボスの阻害要因としては「上司自身の価値観」が48%と最多だったとある。育児時間など制度的なことは徐々に整ってきているので、問題は「家庭より仕事」「家事は女」といった価値観が問題というわけだ。

全管理職がイクボス宣言をした北九州市は、イクボス啓発パンフレット「イクボスプレス」を市内の企業に配布している=北九州市小倉北区の北九州市役所で2015年9月
全管理職がイクボス宣言をした北九州市は、イクボス啓発パンフレット「イクボスプレス」を市内の企業に配布している=北九州市小倉北区の北九州市役所で2015年9月

 育児中で制限勤務の部下を持った自らの経験から言うと、価値観は上司だけでなくみんなが変えないとうまく回らない。例えば、女性の部下が育児をしながら働けるよう配慮したはいいが、家庭のワーク・ライフ・バランスを「夫はワーク」「妻はライフ」という形に強化したのではないかと悩んだことが少なからずあった。

 そうならないためにも専業主夫を作り出すのは「あり」。男性の育児休業の義務化、パパ・クオータ(割り当て)制が有効だとかねて考えている。

 <「メディア万華鏡」は原則、隔週月曜日に掲載します>

経済プレミア・トップページはこちら

山田道子

山田道子

毎日新聞紙面審査委員

1961年東京都生まれ。85年毎日新聞入社。浦和支局(現さいたま支局)を経て社会部、政治部、川崎支局長など。2008年に総合週刊誌では日本で一番歴史のあるサンデー毎日の編集長に就任。総合週刊誌では初の女性編集長を3年半務めた。その後、夕刊編集部長、世論調査室長を経て15年5月から現職。

イチ押しコラム

藻谷浩介の世界「来た・見た・考えた」
地下化されたワルシャワ中央駅上の広場。スターリン建築と民主化後のビルが林立する(写真は筆者撮影)

西に移動させられた国ポーランド 首都ワルシャワの今

 ◇ポーランド・ワルシャワ編(1) 36年前、高校の文化祭のディベートで、「史上最大の英雄は誰か」というお題に、「ポーランドで共産…

メディア万華鏡
週刊文春11月1日号

メディア騒がすドタキャン沢田研二の「格好いい老後」

 騒ぎ過ぎじゃないか。取り上げ方の息もなんだか長い。ジュリーこと沢田研二さん(70)が、10月17日にさいたまスーパーアリーナで予…

職場のトラブルどう防ぐ?

「部下の夫から連日クレーム」42歳女性上司の困惑

 A美さん(42)は、夫が院長を務めるクリニックの事務長を務めています。2カ月前から経理担当として働いているB子さん(33)の夫か…

ニッポン金融ウラの裏

進む「キャッシュレス化」誰が責任を負っているのか

 キャッシュレス決済を巡る論議が高まり続けている。政府も外国人旅行者の増大を踏まえて、キャッシュレス化推進の旗を振り続けている。社…

知ってトクするモバイルライフ
デザインや機能を一新した「iPadプロ」。左が11型、右が12.9型

新「iPadプロ」はホームボタンなくして超高性能

 アップルは、米ニューヨークで10月30日(現地時間)、「iPadプロ」の新モデルを発表した。11月7日に発売される予定で、価格は…