海外特派員リポート

生け締めを英国に広める和食料理人石井義典さんの夢

坂井隆之・統合デジタル取材センター副部長(元ロンドン特派員)
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英国のシェフや料理ライターらを前に、生け締めを実演する石井さん=ロンドンの日本料理店「UMU」で9月19日、坂井隆之撮影
英国のシェフや料理ライターらを前に、生け締めを実演する石井さん=ロンドンの日本料理店「UMU」で9月19日、坂井隆之撮影

 世界の食文化が集まるロンドンで、和食はすっかり定着している。日本人板前が包丁を振るう本格和食店から、やや首をかしげたくなる「和食もどき」まで、人気店を数え上げればきりがないほどだ。

 そんなきら星のようなロンドンの和食界でも、食材へのこだわりで群を抜く料理人がいる。レストラン「UMU」で総料理長を務める石井義典さん(44)である。ことし9月にミシュランの二つ星を獲得したUMUは、英国の和食界で最も勢いのある店の一つだ。

 石井さんは埼玉県出身。京都の老舗料亭で修業し、副料理長まで務めた後、海外で働く夢をかなえるためジュネーブ、ニューヨークに大使公邸料理人として赴任。ニューヨークのレストランでキャリアを積み、数々の賞も受けた。2010年、UMUのオーナーから招かれ、新天地で挑戦するためロンドンに渡った。

 だが、ロンドンで待っていたのは厳しい現実だった。和食の要は魚だが、どの市場を探しても、石井さんが必要とする品質を満たしていなかったのである。「英国の漁師は釣った魚を氷にもつけずにそのまま港へ運んでいる。漁港で魚を冷凍させ、市場の値上がりを待って出荷していく。これではとても刺し身には使えません」

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坂井隆之

統合デジタル取材センター副部長(元ロンドン特派員)

1972年、京都市生まれ。広島大学大学院修了。98年毎日新聞社入社。千葉支局を経て、2003年から経済部で日銀、金融庁、財務省などを担当。12年~16年、欧州総局(ロンドン)特派員として、欧州、中東、ロシア、アフリカの経済ニュースをカバーした。20年4月から現職。共著に「AIが変えるお金の未来」(文春新書)など。