
「狂犬病の犬を近づけるな」「日系人強制収容所を思い出す」「イスラム教徒は登録を」。オバマ米政権のシリア難民政策を巡る議論で、過激な言葉が飛び交っている。パリ同時多発テロをきっかけに始まった「難民排斥」とも言える動きは、多様性を美徳とし、人道支援に熱心な米国の有りようとも絡んで、物議を醸している。
端緒は、パリ同時多発テロの自爆犯の遺体の近くからシリア難民のパスポートが見つかったことだった。これを機に、オバマ大統領の今後1万人のシリア難民受け入れ計画への不満が噴出した。
素早く反応したのは、移民政策に厳しい共和党だ。2016年大統領選の指名争いに出馬している元神経外科医のカーソン氏は、シリア難民について「近所に狂犬病の犬がいれば、子供を遠ざけたいと思うはずだ」と発言。不動産王のトランプ氏は、難民の強制送還を訴え、イスラム教礼拝所(モスク)の監視やイスラム教徒の登録制を提唱。ブッシュ元フロリダ州知事やクルーズ上院議員は、キリスト教の難民を優先させるべきだと主張した…
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及川正也
論説委員
1961年、神奈川県生まれ。早稲田大学政治経済学部卒。88年毎日新聞社に入社。水戸支局を経て、92年政治部。自民党下野から自社さ政権、野党再編などを経て民主党政権に至る激動の日本政界を20年余り追い続けた。2005年からワシントン特派員として米政界や外交を取材。13年北米総局長。16年4月から論説委員。