赤色警報が発令された翌日の北京市内。スモッグに覆われて見通しが悪い=2015年12月8日、井出晋平撮影
赤色警報が発令された翌日の北京市内。スモッグに覆われて見通しが悪い=2015年12月8日、井出晋平撮影

グローバル海外特派員リポート

赤色警報出た北京の大気汚染「最後は風頼み」

井出晋平 / 毎日新聞経済部記者

 朝、マンションの部屋のカーテンを開けると窓の外は真っ白で、近くの大通りにある高層ビルがスモッグに隠れてほとんど見えない状態になっていた。

「厳重汚染」3日連続なら赤色警報を発令

 北京市当局は12月7日夜、大気汚染に関する警報で最高レベルとなる「赤色警報」を初めて発令。自動車のナンバープレートの末尾が奇数か偶数かで通行を規制する措置がとられたほか、小中学校などが休校となり、市民生活に影響が出た。

赤色警報のなか、マスクで自衛する北京市民
赤色警報のなか、マスクで自衛する北京市民

 赤色警報の発令は、中国の大気汚染の深刻さを示す象徴的な出来事として、日本でも大きく報道された。だが、北京に住む者としては「これまでもひどかったのに、なぜ今?」というのが正直な感想だった。というのも、11月27日〜12月1日の大気汚染の方が、今回よりもひどかったためだ。

 11月27日からの大気汚染では、赤色よりも1ランク低い「オレンジ色」警報が出た。しかし、一時は微小粒子状物質「PM2.5」の濃度が日本の環境基準の10倍以上となる、1立方メートルあたり400マイクログラムを超え、一部地域では1000マイクログラム近くに達した。一方、赤色警報が出た際のPM2.5の値は、200〜300マイクログラム程度だった。

 中国では、北京市当局などがPM2.5の濃度を計測してインターネット上で公開しており、スマートフォンなどでリアルタイムにチェックできる。そのため、市民や在留邦人でも日々チェックしている人が多い。PM2.5の濃度が400マイクログラムを超えるような日を経験していると、200マイクログラムでは驚かなくなっている。

暖房熱源を石炭から天然ガスに切り替える対策も

 では、なぜ市当局は今回、赤色警報を発令したのか。中国メディアが報じた当局の説明によると、11月末の「オレンジ色」警報の際には、途中で汚染度合いが軽減された日があり、「厳重汚染が3日間以上続く」という赤色警報の発令条件を満たさなかった。今回は厳重汚染が3日間続く見込みだったため、赤色警報の発令に踏み切ったという。

赤色警報が解除された直後の北京市内は、青空が広がった=2015年12月10日
赤色警報が解除された直後の北京市内は、青空が広がった=2015年12月10日

 また、中国の研究グループによると、警報による自動車の通行規制などで汚染物の排出が約3割抑制され、PM2.5の濃度上昇が食い止められたという。

 10日昼には風が吹いてスモッグが一掃され、赤色警報は解除された。あっという間に青空が現れ、PM2.5の濃度も一気に下がった。中国政府は、冬場に使われる集中暖房のエネルギー源を石炭から天然ガスに切り替えたり、汚染排出源となる工場の閉鎖を命じたりするなど対策に躍起になっている。だが、最後は風頼みだ。

<「海外特派員リポート」は原則、土曜日に更新します>

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井出晋平

井出晋平

毎日新聞経済部記者

1975年、長野県生まれ。慶応義塾大文学部卒。98年毎日新聞社入社。神戸支局、富山支局を経て大阪本社経済部で電機、繊維・薬品、電鉄業界などを担当。2009年4月に東京本社経済部に移り、金融庁、商社・流通、日銀などを担当し、12年4月から中国総局。16年4月から現職。30歳から中国語の勉強を始め、台湾に短期留学した。

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