筆者が新宿で借りた高級賃貸マンションのリビングルーム
筆者が新宿で借りた高級賃貸マンションのリビングルーム

くらしマンション・住宅最前線

「億ション買うより高級賃貸」これだけの理由

櫻井幸雄 / 住宅ジャーナリスト

 私が「都心高級賃貸マンション」を借りることを決心したのは、自宅のスペースが不足していたからだ。

 わが家は介護の関係もあり、20年ほど前から2世帯同居の一戸建てである。所在地は横浜市内。それなりの床面積があるのだが、リビングが二つで浴室も二つ、トイレは3カ所といった特殊な間取りだ。一つ一つの部屋が広いこともあって、個室が一つ不足していた。子供が育つと、これが大きな問題となってきた。

 私が評論家という名の自営業であるため、都心部の拠点が必要だった。たとえば、早朝のテレビ・ラジオ番組に生出演するとき、横浜から都心へ向かうのが困難ということがある。ラジオ局やテレビ局は最近、ハイヤーはおろかタクシーの送り迎えもめったにしてくれない……。

都心の住まいとして期間限定の高級マンション

 都心部のホテルに前泊するにも、このところのホテル不足で、簡単に部屋を借りることができない。高級ホテルの高級スイートなら空いているが、「1泊10万円です」などと言われると、とても予約する気になれない。

 ホテル不足は、私の親族が上京してくるときも、困った問題となる。家族用途だけで部屋が不足しているので、客間がない。ホテルも取りにくいので困るわけだ。

 その他にも、どうしたものか、という問題がいくつも生じたのだが、都心部で居心地のよいマンションを借りると、問題の多くが解決することがわかった。

 その「都心の住まい」は、10年も20年も必要というわけではない。長くても5年くらいか。その期間を乗り越えれば、一戸建てのわが家も建て替えの時期を迎える。子供も独立する。今は「スペースが足りない」「都心の拠点が欲しい」という状況だが、5年以内に状況が一変する可能性が高い。

 それならば、多少家賃が高くても、快適な都心の賃貸マンションを限られた期間だけ借りるのも悪くない。というより、思い切って都心高級マンションを借りることで、問題の大半が解決する、と気づいたことが、賃借を決意した大きな理由だった。

 私は住宅の評論家なので、都心高級賃貸の住み心地を実際に体験し、仕事に生かしたいという希望もあった。家賃の一部を仕事の経費にできるのも、特殊な事情である。2世帯同居で部屋数が足りないという特殊事情に加えて、いろいろな特殊事情が加わっていたわけだ。

質の高いマンションを求める人が増えた

 首都圏の場合、家族向けの間取りは3LDKが多くなる。これは、一家4人が暮らす上で必要最小限の間取り。そして、土地の値段が高い首都圏で「なるべく抑えた価格でファミリーの住まいを購入したい」と考えるとき、効率のよい間取りとなる。

 この必要十分な間取りで生活をしていると、3LDKにおさまらない事情が生じやすい。親との同居、自宅内での起業、家族間の問題……それぞれの家庭が抱える独自の問題が、「賃貸住宅を一定期間借りることで解決する」としたら、家賃を新たな支出に計上することは無謀な決断とは言えないだろう。

 その賃貸住宅は、これまで必ずしも魅力的ではなかった。家賃を抑える分、住み心地はそれなり、というケースが多かったのだ。それで十分という人たちが多いので、「家賃を抑える分、住み心地はそれなり」は、賃貸住宅の本筋といえる。

 しかし、ライフスタイルが多様化した現代、“本筋賃貸”では飽き足らない人たちが出てきた。娘が東京の大学に入学し、1人暮らしを始める。その住まいは、とびきり安全なところを探したい。加えて、娘が東京暮らしをしている間、父親・母親もちょくちょく東京に行きたいので、ホテル費用を考えると、家賃の高い1LDKや2LDKを借りることができる。その父親が頻繁に東京に出張する仕事なら、なおさら、都心で質の高い賃貸マンションが求められるだろう。

分譲を買うのと同じような「賓客」扱い

 東京にある賃貸住宅のすべてが高級化する必要はないが、一部に高額家賃の高級賃貸マンションがあってもよい。家賃が高くても、それに見合う快適さや安全性があれば、一定の需要が見込まれる。

 分譲価格1億円の都心マンションを買った人が、1LDKや2LDKを賃貸に転用した場合、家賃の目安は月額40万円だ。もし、24時間態勢の管理サービスやエアコンや浄水器の定期的フィルター交換などが行われるマンションであれば、家賃は45万円ぐらいになると思われる。しかし、不動産会社が賃貸マンションとして計画した物件なら、それより1〜2割は安くなるのではないか、というのが私の実感だ。

 さらに、昨今の分譲マンションではなかなか採用できない、レベルの高い設備仕様やサービス内容を実現させていることを加味すると、割安感は増す。もう一つ加えると、民間賃貸住宅を借りるとき、一部の物件で感じる「大家優先、賃借人軽視」のムードは、当然ながら都心高級賃貸マンションにはまったくない。分譲マンションを買うときと同様、大切な賓客として扱ってくれる。

 家賃が30万円、40万円の賃貸と聞くと「高いなあ」と思うが、内容を知ると、その賃料で十分な納得感が生じる。それが、都心高級賃貸マンションの知られざる特性だと私は考えている。

 <「マンション・住宅最前線」は毎週木曜日更新です。次回は2016年1月7日です>

住んでわかった都心高額賃貸マンションのすごさ

建て替えでも廃虚でもない「マンション延命」という選択

マンションを無性に買いたくなるお盆明けと正月明け

穴場路線でも「水辺の暮らし」がある越谷レイクタウン

以前から売っている「旧価格」継続物件が狙い目

「東京超都心」の不動産価格は五輪後も下がらない!?

経済プレミア・トップページはこちら

櫻井幸雄

櫻井幸雄

住宅ジャーナリスト

1954年生まれ。年間200物件以上の物件取材を行い、首都圏だけでなく全国の住宅事情に精通する。現場取材に裏打ちされた正確な市況分析、わかりやすい解説、文章のおもしろさで定評のある、住宅評論の第一人者。毎日新聞、日刊ゲンダイで連載コラムを持ち、週刊ダイヤモンドでも定期的に住宅記事を執筆。テレビ出演も多い。近著は「不動産の法則」(ダイヤモンド社)。

イチ押しコラム

藻谷浩介の世界「来た・見た・考えた」
地下化されたワルシャワ中央駅上の広場。スターリン建築と民主化後のビルが林立する(写真は筆者撮影)

西に移動させられた国ポーランド 首都ワルシャワの今

 ◇ポーランド・ワルシャワ編(1) 36年前、高校の文化祭のディベートで、「史上最大の英雄は誰か」というお題に、「ポーランドで共産…

メディア万華鏡
週刊文春11月1日号

メディア騒がすドタキャン沢田研二の「格好いい老後」

 騒ぎ過ぎじゃないか。取り上げ方の息もなんだか長い。ジュリーこと沢田研二さん(70)が、10月17日にさいたまスーパーアリーナで予…

職場のトラブルどう防ぐ?

「部下の夫から連日クレーム」42歳女性上司の困惑

 A美さん(42)は、夫が院長を務めるクリニックの事務長を務めています。2カ月前から経理担当として働いているB子さん(33)の夫か…

ニッポン金融ウラの裏

進む「キャッシュレス化」誰が責任を負っているのか

 キャッシュレス決済を巡る論議が高まり続けている。政府も外国人旅行者の増大を踏まえて、キャッシュレス化推進の旗を振り続けている。社…

知ってトクするモバイルライフ
デザインや機能を一新した「iPadプロ」。左が11型、右が12.9型

新「iPadプロ」はホームボタンなくして超高性能

 アップルは、米ニューヨークで10月30日(現地時間)、「iPadプロ」の新モデルを発表した。11月7日に発売される予定で、価格は…