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東京・自由が丘「ショコル」が石臼で作るチョコの官能

小高朋子・旅食ライター・カメラマン
コイン型チョコレート「美しい鳥QUETZAL(ケツァール)」52枚入、税込2354円=小高朋子撮影
コイン型チョコレート「美しい鳥QUETZAL(ケツァール)」52枚入、税込2354円=小高朋子撮影

 甘くないチョコレートと言ったらいいだろうか。実際には、甘みはあるのだがカカオの芳醇(ほうじゅん)な香りが広がり、苦みと甘みがゆっくりとやってくる。抜けるような酸味の切れ味は、カカオ豆そのものが持つ味の特徴だ。

きっかけはフィリピンのチョコドリンク

 渋谷と横浜を結ぶ東急東横線・自由が丘駅からバスで走ること10分ほどの住宅街にxocol(ショコル、東京都世田谷区)の店舗はある。こぢんまりとした可愛らしい店舗の奥が工房だ。2013年にオープンした同店は、代表の君島香奈子さんが製造から販売までのすべてを、ひとりで切り盛りしている。

 君島さんがチョコレート作りを始めたきっかけは、11年のフィリピン旅行中に飲んだ1杯のチョコレートドリンクだった。それは、カカオ豆をペースト状にし、タブレット型に固めた「タブリア」と呼ばれるものを、お湯と砂糖、ミルクを入れて溶いたものだった。個性的な味わいに衝撃を受けたという。

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旅食ライター・カメラマン

1982年、神奈川県生まれ。アパレル業界、映像製作会社を経て、フリーランスに。持続可能なモノづくりの可能性を求めて各地を巡り、地域の食文化、工芸品、産業などを取材し、写真、映像も用いてその魅力を紹介している。現在、農業者向けのビジネススクール(オンラインアグリビジネススクール)にかかわり、各地の農業現場の取材を担当。旅と、おいしい食べものと日本酒が何よりも好き。