衆参ダブル選も想定した予測記事=週刊朝日(左上)、サンデー毎日(左下)、週刊文春(右上)、週刊現代(右下)
衆参ダブル選も想定した予測記事=週刊朝日(左上)、サンデー毎日(左下)、週刊文春(右上)、週刊現代(右下)

社会・カルチャーメディア万華鏡

「衆参ダブル選」週刊誌の関心は自民大勝と改憲可能性

山田道子 / 毎日新聞紙面審査委員

 <「自民圧勝」で改憲一直線><進撃の自民「完勝」で「改憲準備完了」><衆参ダブル選挙と安倍改憲の現実味><衆参ダブル選挙 自民なんと衆院323議席!>−−年末年始に発売された週刊誌4誌は、夏の参院選の当落予測、衆参同日選となった場合の議席予測の記事を大きく取り上げた。それぞれサンデー毎日1月24日号、週刊朝日1月22日号、週刊文春1月14日号、週刊現代昨年12月26日号の見出しだ。

 各誌の発売後・直前の1月10日、安倍晋三首相がNHKの番組で、「夏の参院選では自民、公明両党だけなく、おおさか維新の会など一部野党も含めた改憲勢力で参院の3分の2議席獲得を目指す」とぶち上げた。

 憲法改正には、衆参両院それぞれで3分の2以上の賛成で発議し、国民投票で過半数の賛成を得る必要がある。衆院では、すでに自公が3分の2以上の議席を確保しているが、参院では自公会派は134議席で、3分の2の162議席には達していないからだ。果たして、改憲勢力で3分の2を取れそうなのかどうかは後で見るとして、年末年始の週刊誌に参院選の当落予測記事が並んだのはなぜか、を考えてみる。

当落予測が売れる選挙への高い関心

 国政選挙の立候補予定者の個人名を並べて一人ずつ当落を予測するのは、一般紙やテレビではやっておらず、週刊誌独特のもの。選挙は関係者が多いので売れるコンテンツだ。参院選は7月に実施されることが確実だし、同日選の可能性もあるので、各誌は早々と年末年始号にぶつけたのだろう。

2014年12月に行われた衆院選の当落予測記事=サンデー毎日2014年12月7日号
2014年12月に行われた衆院選の当落予測記事=サンデー毎日2014年12月7日号

 国政選挙の当落予測記事を掲載した号が売れると言っても、例えば2014年12月の衆院選のように、自民大勝が想定できる場合はそうでもない。一方、民主党政権誕生につながる09年7月の衆院選の前は売れた。

 08年9月のリーマン・ショックで解散・総選挙を封印せざるを得なくなった当時の麻生太郎首相が、09年に入っていつ解散するのかが何度も取りざたされ、そのたびに週刊誌が衆院選当落を予測し、政権交代がなるかどうかが焦点になって売れたのだ。逆に言うと、当落予測を載せた週刊誌が売れる時は、世の中の選挙への関心が高いと見ていいだろう。

 そこで今夏の参院選、首相発言で関心は高まるのではないか。改憲勢力で3分の2議席を獲得できそうなのか。上記4誌の予測で見てみよう。

安倍首相「改憲勢力で2/3」の現実味

 毎日新聞11日朝刊の1面記事<参院選目標/首相「改憲勢力で2/3」 おおさか維新加え>によると、自公両党だけで非改選議員も含め3分の2超を占めるには、改選議席121のうち、86議席の獲得が必要になる。おおさか維新の会など野党の改憲勢力が加われば、ハードルはさらに下がるという。

2016年1月11日の毎日新聞東京朝刊1面
2016年1月11日の毎日新聞東京朝刊1面

 まずサンデー毎日は、選挙プランナーの三浦博史氏の予測。自民63、公明14で計77。おおさか維新の獲得予測議席8を足すと85。86議席までわずか1議席だ。公明党の山口那津男代表は参院選で憲法改正を問うことに慎重なので、公明党は改憲勢力なのかという根本的な疑問がわくが、記事でジャーナリストの鈴木哲夫氏は「軽減税率問題では、自民党は公明党の主張を入れて大幅に譲歩しました」「改憲の可能性は高まったと言えます」「菅官房長官は公明党と太いパイプを持っており、参院選の結果次第で折り合いがつくでしょう」と話している。

 週刊朝日は、政治評論家の浅川博忠氏と政治ジャーナリストの角谷浩一氏の2人の予測を掲載。自公、おおさか維新、日本のこころを大切にする党(旧次世代の党)、新党改革を「改憲」勢力とみなす。

 浅川氏の予測によると、自民64、公明14、おおさか維新6、他は0で計84議席。角谷氏の予測では計73議席。非改選議席も含めると、「特に浅川氏の予測では、自公におおさか維新、日本のこころを大切にする党を加えた“改憲勢力”の合計で、憲法改正の発議条件である3分の2(162議席)を突破した」と書いた。 

週刊誌報道だけ見れば改憲まであと一歩

 週刊文春は久保田正志・政治広報システム研究所代表と取材班が議席を予測。自民58、公明13、おおさか維新8、日本のこころ1と、改憲勢力の合計議席は80で86には及ばない。が、久保田氏も非改選の自公、おおさか維新、日本のこころも合わせると、3分の2を上回ると予測している。

 「どこよりも早い」と銘打った週刊現代昨年12月26日号の主見出しは「自民党なんと衆院323議席」。参院選の予測は、自民61、公明15、おおさか維新5で合計は81議席だった。

 自公が議席を伸ばし、改憲の現実味が高まっているような予測だが、これらはあくまで現時点のもの。民主党と共産党など野党の候補者調整によって数字が変わってくるというのは、各誌共通だ。

衆院本会議で松野頼久維新の党代表(手前)の代表質問を聞く安倍晋三首相(右)=2016年1月6日、藤井太郎撮影
衆院本会議で松野頼久維新の党代表(手前)の代表質問を聞く安倍晋三首相(右)=2016年1月6日、藤井太郎撮影

 新聞が国政選挙期間中に実施する情勢調査を含め、選挙結果の予測記事については、投票行動を誘導するアナウンスメント効果があるとの批判が根強い。しかし、メディアの予測記事がない場合、特定の勢力がある意図を持って選挙情勢を流した場合、それが正しいものかどうかの判断がつかない。

 週刊誌のような早い段階での予測記事は、今の政治や自らの投票行動を考える材料になるのではないだろうか。多様な情報の一つとして利用してほしい。

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山田道子

山田道子

毎日新聞紙面審査委員

1961年東京都生まれ。85年毎日新聞入社。浦和支局(現さいたま支局)を経て社会部、政治部、川崎支局長など。2008年に総合週刊誌では日本で一番歴史のあるサンデー毎日の編集長に就任。総合週刊誌では初の女性編集長を3年半務めた。その後、夕刊編集部長、世論調査室長を経て15年5月から現職。

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