スキル・キャリア思いを伝える技術

謝罪文書で大事なのは「気持ちと事実を分ける」こと

川井龍介 / ジャーナリスト

 近ごろあまり聞かなくなりましたが、TPOという言葉があります。Time(時) Place(場所) Occasion(場合)の頭文字をとったものです。もともとファッションについての言葉として生まれました。服装は時と場所と場合によって決めるべきだという意味を、「TPOが大切」といったように表しました。

 ここから派生してさまざまな事柄について、時と場所と場合に合わせて対応することの大切さを表すときに使われてきました。言葉の使い方もまさにこれと同じで、伝える相手や目的に応じて変える必要があります。そのうえでどういう手段でどう表現するかが決まるでしょう。

 つまり、誰(Who)に何(What)をどう(How)伝えるかという「WWH」が基本になります。

伝えたい相手がどんな人か確認する

 なにより大切なのは、伝えたい相手はどんな人(たち)なのかを確認することです。そのうえで相手に合わせた伝え方を選びます。ひとりよがりはいけません。自分がいかにうまく書けたと思っても相手にその文書の意図が伝わらなければ意味がありません。キャッチボールと同じです。相手が子供なのか高校野球の経験者かによって投げる球も投げ方も変えるように、言葉の伝え方も変える必要があります。

 例えば、内容がわかりやすくても書き方が少々失礼だったり、忙しい相手に長々とメールを送ったりしたら読まれないかもしれません。第一の目的は相手に伝わることであり、うまく書くことではありません。

 相手はいったいどういう人(たち)なのか。年齢、性別、職業はもちろんのこと、忙しい人なのか時間に余裕がある人なのか。どんな状況で読むと予想されるか。相手の置かれた状況や取り巻く環境を確認します。さらに、相手が特定の個人であれば、せっかちな人なのか、気むずかしい人なのか、アバウトな人なのかなど、その人の性格も調べられればなおいいでしょう。

伝える目的は「問い合わせ」か「依頼」か「提案」か

 次に、伝えたい言葉(文書)の種類は何かを確認します。言い換えれば伝える目的です。宣伝なのか、問い合わせなのか、謝罪なのかといった問題です。よく使われる文書の種類を挙げてみると、

 「問い合わせ」「依頼」「提案」「報告」「説明」「お礼」「謝罪」「苦情」などがあります。

 エッセーや日記を書くのと違ってこうした実用的な文書は、書くことそのものに意味があるのではなく、書くことによって実利的な目的を達成することが求められます。謝罪であれば相手に納得してもらうのが目的です。文書の目的にあった書き方があります。

どう表現して伝えるか

 伝えたい相手がどんな人で、文書の種類は何かを確認したら、あとはどう表現して伝えるかです。前回触れたように、わかりやすさを軸としたいわば文章表現上の方法やテクニックの問題です。

 文章作成上の細かい点は別にして、おもなポイントを挙げると、

   1 伝える内容のテーマをはっきりさせる

   2 伝える内容を伝える本人が理解する

   3 大事な内容から言い表す

   4 事実と気持ち(価値判断)を分ける

 の4点があります。1は、何について伝えるか、テーマをはっきりさせることです。2は、伝えようとする内容を本人が熟知していなければ、うまく伝えられないということです。例えば、何かの会議の報告をまとめようとしたときなどです。

 3は、伝えたいポイントは早めに示すということです。4は、事実を述べる部分と意見や気持ちを述べる部分をできるだけ分けるということです。

 以上のことが文書を作成するときに考慮する基本です。しかし、もうひとつ考慮したいのが、言葉で表すにもメールや手紙や電話など手段がいろいろあることです。その使い分けが必要だということです。

 この点は次回で触れると同時に、次回以降さらに具体的に先に挙げた4点と文章の種類について考察していきます。

 <「思いを伝える技術」は、隔週水曜日に更新します。次回は2月3日掲載です>

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川井龍介

川井龍介

ジャーナリスト

1980年慶応大学法学部卒。新聞記者などを経てフリーのジャーナリスト、ノンフィクションライター。実用的な文章技術を説いた「伝えるための教科書」(岩波ジュニア新書)をはじめ「大和コロニー~フロリダに『日本』を残した男たち」(旬報社)、「フリーランスで生きるということ」(ちくまプリマ―新書)を2015年に出版。このほか「ノーノー・ボーイ」(ジョン・オカダ著、旬報社)の翻訳をてがける。

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