パナソニックはCESで行われた記者会見で、光ディスクをサーバー向けに使う「freeze-ray」を発表した
パナソニックはCESで行われた記者会見で、光ディスクをサーバー向けに使う「freeze-ray」を発表した

IT・テクノロジーハードウエア新時代

あなたの思い出をクラウドに記憶させる「freeze-ray」技術

西田宗千佳 / フリージャーナリスト

 1月6〜9日の4日間、米ラスベガスで、世界最大の家電展示会「CES 2016」が開催された。家電展示会といっても昨年以降、個人向け家電では大きな目玉がなくなってきている。今年もその傾向は変わらず、これからの可能性が見込めるバーチャルリアリティー(VR)やドローンといったビジネスを手がける企業の姿が、大手・ベンチャーを問わず目立つ状況だった。

 一方、より地に足のついたビジネスとしてアピールされたのがB2B(Business-to-Business)向けの用途だ。自動運転車を中心とした自動車関連の展示も、消費者個人へのアピールが目的ではなく、自動車産業へのアピールが狙いだ。また同時に、ディスプレーパネルやLSI、センサーなどの技術を、多くの業種にアピールする場と考える企業も少なくなかった。

 そうした状況を反映してか、CESの運営団体である「CEA(全米家電協会)」は、今年から名称を「CTA(全米民生技術協会)」に変更した。家電をアピールする場から「技術によるイノベーション」をアピールする場へと脱皮を図っている、といえそうだ。

フェイスブックとパナソニックが共同で開発

 そんな中、あまり報道されることもなかったようだが、筆者が注目した発表がひとつある。パナソニックが発表した「freeze-ray」という技術だ。

CES会場に展示された「freeze-ray」。外観は無味乾燥なサーバーだが、低消費電力と長期保存の特性を生かし、大切な情報の保存に使われる
CES会場に展示された「freeze-ray」。外観は無味乾燥なサーバーだが、低消費電力と長期保存の特性を生かし、大切な情報の保存に使われる

 この技術は、光ディスクを使ってサーバーのデータを保存するためのものだ。世界有数のサーバー保有数を誇り、保存しているデータ量も極めて多いFacebookと提携、共同開発した技術として発表された。Facebookは第1世代製品をすでに導入済みで、技術の進歩に伴い、新しい世代に入れ替えながら使っていくという。

 このような技術がもてはやされる背景には、サーバーによるデータ保存について「信頼性」と「省エネルギー」の両方が重視されている、という点がある。

コールドデータを保存するデータセンター向け

 SNSやメール、各種メッセージングなど、我々の日常生活はクラウドサービスが支えている。大切な思い出のメッセージや写真、ビジネスにとって重要な書類なども、ネットワークの向こうに保存されることが当たり前になった。そこで信頼性を担保するため、クラウドサービスを運営する企業は、巨大なデータセンターを作り、そこで日々データを多重化しながら運営している。

 データにはいろんな種類がある。すぐにアクセスできなければいけないものもあれば、バックアップに類するもののように、すぐにアクセスする必要はないが長期保存が必要なものもある。こうした、すぐには取り出さないデータのことを、通称「コールドデータ」と呼ぶ。サービスが長く運営され、生活基盤として定着していくほど、コールドデータの量は増えていく。

 だが、コールドデータとはいえ、データセンターに保存することに変わりはない。アメリカでは現在300万カ所のデータセンターが運用され、アメリカ全体の電力の2%が使われている。たった2%、というが、それでも20億キロワット時にも達している。これをできるだけ削減することが必要だ。

「freeze-ray」は、Facebookと提携して開発され、すでに同社のインフラとして活用されている
「freeze-ray」は、Facebookと提携して開発され、すでに同社のインフラとして活用されている

ハードディスクより省電力、高信頼性

 ここで、光ディスクが出てくる。もちろん、これは民生用のブルーレイなどとは違うもの。ベース技術は同じだが、カートリッジ化されたディスクにコールドデータを記録する形をとる。こうすれば、従来バックアップにつかわれていたテープより素早くて安定長期保存できる上に、ハードディスクを使ったバックアップに比べ、消費電力が大きく下がる。

 個人向けの光ディスクは需要が落ちている。これからは「こだわりのある少数が利用し続けるもの」になり、ほとんどの人がネットワークから取り出した映像や音楽を楽しむ時代になるだろう。

 一方で、その光ディスクは生活の基盤を支える技術として、再度価値を増していく。対象をB2Bに切り替え、視点を変えることで、技術はまだまだ生きる道があるのだ。

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西田宗千佳

西田宗千佳

フリージャーナリスト

1971年福井県生まれ。フリージャーナリスト。得意ジャンルは、パソコン・デジタルAV・家電、そしてネットワーク関連など「電気かデータが流れるもの全般」。取材・解説記事を中心に、主要新聞・ウェブ媒体などに寄稿するほか、年数冊のペースで書籍も執筆。テレビ番組の監修なども手がける。

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