青春小説の系譜

大江健三郎「セヴンティーン」こじらせ10代のパンク

鶴谷真・毎日新聞学芸部記者
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演説中、右翼少年に短刀で刺された浅沼稲次郎・社会党委員長=東京・日比谷公会堂で1960年10月12日、長尾靖撮影
演説中、右翼少年に短刀で刺された浅沼稲次郎・社会党委員長=東京・日比谷公会堂で1960年10月12日、長尾靖撮影

 1960(昭和35)年10月12日午後3時ごろ、浅沼稲次郎・社会党委員長が、東京・日比谷公会堂で演説中に右翼の少年に刺殺された。聴衆約1000人の眼前の凶行だった。この年の6月15日には日米安全保障条約改定に反対する全学連主流派デモ隊が国会に突入し、東大生・樺(かんば)美智子さんが亡くなった。

 翌61年1月、文芸誌「文学界」に載ったのが大江健三郎さんの短編小説「セヴンティーン」である。<今日はおれの誕生日だった、おれは十七歳になった、セヴンティーンだ>。こう書き起こされる。

 主人公の「おれ」は<自瀆(じとく)の名手>を自認し、劣等感とないまぜの自意識が爆発せんばかりの高校生だ。彼が右翼団体に参加して自信を得ていく物語、というのはご存じの方も多かろう。だが私にとって最も印象深かったのは、冷え切った家族の描写だ。

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鶴谷真

毎日新聞学芸部記者

1974年、神戸市出身。2002年毎日新聞社に入社し、岡山支局、京都支局を経て08年に大阪本社学芸部。13年秋から東京本社学芸部。文学を担当している。