青春小説の系譜

煩悩も知性も青春の妙味「赤頭巾ちゃん気をつけて」

鶴谷真・毎日新聞学芸部記者
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学生が占拠した安田講堂に放水する機動隊=1969年1月
学生が占拠した安田講堂に放水する機動隊=1969年1月

 歌は世につれ世は歌につれ。小説はどうだろう。庄司薫さん「赤頭巾ちゃん気をつけて」である。

 1969(昭和44)年に発表され、芥川賞を受賞した。単行本と文庫本を合わせて約165万部(2016年2月現在)に達する大ベストセラーになった。面白いに違いないと確信して読み始めたところ、戸惑った。

 まず文体。「あーあ、やんなっちゃったということになるわけだ」「どうなっちゃっているのだろう」「生意気言っちゃってさ」などと、若者のポップな語り口調が続く。

 これは米国の作家、サリンジャー(1919〜2010年)が、思春期の心理を柔らかく描いた「ライ麦畑でつかまえて」(1951年)で使った「冗舌文体」と同じスタイルだ。芥川賞選考委員たちの間では強い嫌悪感も示されたようだが、後続の作家に与えた影響は絶大である。

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鶴谷真

毎日新聞学芸部記者

1974年、神戸市出身。2002年毎日新聞社に入社し、岡山支局、京都支局を経て08年に大阪本社学芸部。13年秋から東京本社学芸部。文学を担当している。