記者発表会に登壇したバズフィード・ジャパン創刊編集長の古田大輔氏
記者発表会に登壇したバズフィード・ジャパン創刊編集長の古田大輔氏

IT・テクノロジーネットから読み解く経済・社会

新興メディア・バズフィードは日本でもバズるのか

まつもとあつし / ジャーナリスト

 今年1月に日本でも始まったちょっとユニークなニュースサービス「BuzzFeed(バズフィード)」を2回にわたって取り上げます。サービス発祥地である米国の他、英語圏を中心に11カ国でサイトを開設しており、月に2億人以上が閲覧する世界最大級のニュースサービスです。その特徴は、あらゆるソーシャルメディアに拡散するニュース(バズ)を提供(フィード)する点にあります。

数百万人のフォロワーがいるSNSアカウント

アプリストアのバズフィードのページ。コンピューターが機械翻訳したような説明文が記載されている
アプリストアのバズフィードのページ。コンピューターが機械翻訳したような説明文が記載されている

 スマホで閲覧するための「バズフィード」アプリはありますが、アプリをダウンロードするストアの紹介文を見てもわかるように、まだ日本語に最適化されていないようです。ホームページもありますが、新着ニュースの一覧やランキングの表示があるだけで、ずいぶんシンプルな構成です。

 それもそのはず、読者の多くはこのホームページやアプリではなく、ツイッターやフェイスブック、インスタグラムなどをはじめとしたソーシャル・ネットワーキング・サービス(SNS)などを通して、バズフィードが提供するニュースに接しているのです。

 例えば、「BuzzFeed News」(英語版)のフェイスブックアカウントには、117万人以上のフォロワーがおり、反響のある記事には数万の「いいね!」がつきます。また、各国版やテーマ別の「Food」「Video」などのアカウントもあり、「Food」は約1980万人、「Video」は約940万人のフォロワーがいます。

 「BuzzFeed」のツイッターアカウントには292万人以上の、そして6秒間の短い動画を共有するVine(バイン)のアカウントには、約100万人のフォロワーがいるのです。

 そして、記事の内容や長さなど、それぞれのソーシャルメディアに最適化された形でニュースが配信されているのも興味深いところです。

シェアを狙った記事の作り方

バズフィード・ジャパン創刊編集長の古田大輔氏
バズフィード・ジャパン創刊編集長の古田大輔氏

 「従来のニュースサイトは、ページ閲覧数(PV=ページビュー)の多さに価値を見いだしていたと思いますが、私たちはそういった指標を絶対視しません。重視しているのは『シェア』なんです」

 そう話すのは、バズフィードジャパンの創刊編集長・古田大輔さん(38)。朝日新聞で海外特派員や、ウェブサービスでの編集者・記者を務めた経歴の持ち主です。

 古田さんがいう「シェア」とは、フェイスブックのものだけを指すのではありません。ツイッターのリツイートや、インスタグラムの「いいね」など、読者が「友だちとこの情報を共有したい」というアクション全般をそう呼んでいます。新聞では(たとえデジタル媒体でも)、なかなか獲得することができなかったのが「シェア」です。バズフィードには、そのためのノウハウとスキルを持った編集者や記者がいる、と古田さんは言います。

 「新聞社の記事は、あくまでも紙面に載せることを前提に作られています。デジタル化、スマホへの対応にあたっては、紙とスマホのサイズが異なるという表示の問題があるだけでありません。そもそもの取材対象から記事の文体や写真の使い方などまで、根本から記事の作り方が変わってくるのです」

スマホに合う記事の文体や写真の使い方をしているという
スマホに合う記事の文体や写真の使い方をしているという

 たしかにバズフィードの記事を見ると、お手軽料理の方法や可愛い動物の写真など「インターネット・ミーム」とも呼ばれる、口コミで広がりやすい話題が目に付きます。一方、1月19日公開の福島第1原発の現場ルポは、元大手新聞社の記者が取材した長文のリポート。写真を多用した、まるでブログのような印象です。新聞紙面などに比べて、デジタルで読まれやすい体裁を狙っているのです。

複数のソーシャルメディアに対応してリスク分散

 現在、バズフィードジャパンに在籍するのは15人。2016年内に30人以上の体制を整えたいと古田さんは話しますが、1000人以上の記者を抱え、あらゆるニュースをカバーする大手新聞社とは、おのずとアプローチも異なります。

 「バズフィードは、ソーシャルメディアに依存しているように見えるかもしれません。しかし、複数のソーシャルメディアに応じたニュースを提供して、独自の指標でシェアによる拡散の度合いを測っています。こうしてリスク分散している、とも言えるのです」

 アプリや自前サイトへの誘導ではなく、ソーシャルメディア上でニュースを拡散(シェア)することに力を注ぐバズフィードは、デジタルやスマホに適した記事をどのように作るのでしょうか。次回はその点に迫ります。

バズフィードジャパンのホームページ。新着やランキングを載せたシンプルな構成になっている
バズフィードジャパンのホームページ。新着やランキングを載せたシンプルな構成になっている

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 「ネットから読み解く経済・社会」は、昨年末まで「ニュースアプリ最新事情」を連載したジャーナリスト・まつもとあつし氏が、ネット上の時事を取り上げながら、その勘所を紹介していきます。原則、月2回お届けします。

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まつもとあつし

まつもとあつし

ジャーナリスト

ITベンチャー、出版社、広告代理店、映像会社などを経て、現職。ASCII.jp、ITmedia、ダ・ヴィンチなどに寄稿。著書に「知的生産の技術とセンス」(マイナビ/@mehoriとの共著)、「ソーシャルゲームのすごい仕組み」(アスキー新書)など。取材・執筆と並行して東京大学大学院博士課程でコンテンツやメディアの学際研究を進めている。

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