会社合同説明会に向かう学生たち=東京都江東区で2016年3月19日、竹内紀臣撮影
会社合同説明会に向かう学生たち=東京都江東区で2016年3月19日、竹内紀臣撮影

スキル・キャリア新しゅうかつ日記2016

東北の安宿で考えた仕事、将来、そして東京

内山勢 / 毎日新聞編集委員

2016年2月29日(月) 東北の安宿にいた私

 東京の私立大文系学部3年、藤田唯さん(21)は就活解禁日の前夜、東北地方のゲストハウスの一室にいた。夕食付き1泊3300円の激安宿でパソコンに向かい、原稿を書いては消し、書いては消していたのだ。

 知らない街の安宿に一人でいると、何かから解放された気分になり、同時に孤独も感じる。東京では多くの大学3年生が就活の戦闘準備を始めているだろう。ちょっと不安になって、午前0時すぎに就活サイトにアクセスしてみたが、混み合っていてつながらなかった。

震災5年の被災地で取材を体験

 藤田さんはメディアの記者を目指している。昨年の夏の3日間、中国地方のある新聞社でインターンシップを経験し、その思いがいっそう強まったという。

 「取材現場だけでなく広告、販売、事業など新聞社の仕事をひと通り見ました。新聞社では仕事がリレーみたいにつながっていて、そうやって新聞を読者に届けているんだなあと思いました」

 年が明け、2月から3月にかけての2週間、今度は東北地方の新聞社でインターンシップをした。震災被災地の中小企業がどう復興に取り組んでいるかをチームで取材した。実際に新聞に載せることを前提に、どの部分をどう書くか、担当デスクと何度もやりとりした。解禁前夜、まさにその原稿を書いているところだった。

 記者志望者が、震災5年を迎える被災地で取材を体験させてもらい、記事を書けるなら、これ以上ない貴重な職業体験のはずだ。でも、目に見えない大きな就活圧力が、藤田さんを少し不安にさせた。

 「私が東北にいる間、友人たちは東京の企業説明会に行って、筆記試験の準備をしているんだろうなあと思うと、正直焦りました。今考えると、そんなことより何倍も大切な経験をさせてもらっていたのに。でもその時は正直、焦ったんです」

会社合同説明会に向かう学生たち=東京都江東区で2016年3月19日
会社合同説明会に向かう学生たち=東京都江東区で2016年3月19日

仕事の本質に触れるインターンシップの価値

 今年の選考活動は早く進みそうだ。3月1日就活解禁、6月1日採用開始の短期スケジュールの中で、どの企業も早めに学生に接触し、優秀な人材を確保しようとしている。インターンシップはそのための有力な手段。学生にとっても、仕事の中身をのぞける絶好の機会だ。

 経団連は「採用に直結するインターンシップはよろしくない」と言っているが、少なくとも学生は、それが壮大な建前であることを知っている。だからこぞってインターンシップに応募する。

 藤田さんはいま、時事問題や適性検査の問題集に取り組みながら、マスコミ説明会にできるだけ参加するようにしている。もちろん、縁ができたマスコミの関係者とも連絡を絶やさない。

 <「新しゅうかつ日記2016」は毎週土曜、日曜日掲載です>

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内山勢

内山勢

毎日新聞編集委員

1983年、毎日新聞社入社。山形支局を振り出しに、週刊「サンデー毎日」、大阪本社社会部、東京経済部各記者、週刊エコノミスト編集委員、BS11プロデューサーなどを経て、2010年4月から、毎日新聞夕刊紙面の「キャンパる」編集長兼編集編成局編集委員兼「教育と新聞」推進本部委員。宇都宮大学客員教授。

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