
西郷隆盛、乃木希典、田中角栄。戦後を代表する思想家、吉本隆明が日本の近代史を考えるうえで、最も重要な人物として挙げたのが、この3人だった。
私が「西郷より大久保利通の方が大きな役割を果たしたのではないですか」と尋ねても、「軍人としては乃木より児玉源太郎の方が有能だったでしょう」と話しても、吉本は笑って首を横に振るだけだった。
私は毎日新聞に勤めていた2000年代の前半、同僚の記者と2人で2週間に1度、東京・本駒込にあった吉本の自宅に通い続けた。それは2年以上続いた。吉本に日本の文学作品を語ってもらい、聞き書きする新聞連載のためだった。今では2冊の新潮文庫になっている。
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