くらし20年後の暮らしとお金

長生きとインフレから生活を守る公的年金の強み

塚崎公義 / 久留米大学商学部教授

知っておきたい公的年金(4)

 老後のリスクとしては、病気と貧乏と孤独が主なものでしょうが、本稿では筆者の守備範囲である貧乏のリスクについて考えてみましょう。

 現役時代に真面目に働いて、そこそこ所得もあり、貯金もし、質素に暮らしていた人が、老後の生活資金に困るようになる可能性としては、長生きとインフレが重要です。そこで、本稿では長生きとインフレのリスクについて考えてみましょう。

老後の資金に関しては、長生きはリスク

 長生きをすることは、良いことです。特に、健康で長生きをすることは素晴らしいことです。しかし、老後の資金のことだけを考えると、長生きはリスクなのです。現役時代に頑張って貯金しても、それを取り崩しながら老後を暮らしていれば、いつかは老後資金が底を突いてしまうからです。

 日本人は長生きです。60歳で定年になるとして、60歳時点の平均余命は男性が約23年、女性が約29年あります。しかも、医学が進歩していますから、平均余命は更に長くなると考えておいた方が良いでしょう。

 そうなると、60歳で引退するわけにいきません。元気な間は働きましょう。幸い、少子高齢化で労働力不足の時代になれば、1日4時間しか働けない高齢者でも、喜んで雇ってくれる会社が見つかるでしょう。

 それから、長生きしても死ぬまで受け取り続けることができる終身年金を大事にしましょう。といっても、民間には終身年金の商品が多くないので、公的年金を大事にしましょう。公的年金は長生きのリスクをカバーしてくれるので、目減りする心配を差し引いても大変心強い存在なのです。

少子高齢化でインフレの時代が来る

 インフレは、リスクというよりも高い確率で予想される事態です。まず、日銀総裁が2%のインフレにすると宣言しているわけですから、2%とまではいかなくても、ある程度のインフレにはなるでしょう。

"2%のインフレ"を目標に掲げる日銀の黒田東彦総裁=2016年3月28日、藤井太郎撮影

 少子高齢化で労働力不足になれば、賃金が上がるでしょうから、それによって物価も上がるでしょう。

 少子高齢化が進めば、現役世代が高齢者の介護に忙しくて物を作る余裕が無くなり、物不足によってインフレになることも考えられます。足りない物を輸入すれば、輸入のための米ドル買いが増加して、米ドルが高くなり、輸入物価が高くなるので、やはりインフレになるでしょう。

 予想ではなくリスクとしては、大災害の可能性を考えるべきでしょう。東京、名古屋、大阪が大地震と大津波に襲われたとしたら、工場が壊れて生産が激減する一方で、猛烈な復興需要が生じるので、物価が高騰するでしょう。

老後資金は、インフレに強い米ドルと株で運用すべし

 インフレのリスクを考えると、老後資金を現金や銀行預金で持っているのは危険です。表面的な金額では損をしなくても、インフレで目減りしてしまい、老後の生活に支障を来すからです。

 インフレに強い運用というと、やはり公的年金でしょう。長生きしている間にインフレが来ても生活をそれなりに守ってくれる、最強の味方です。サラリーマンは年金保険料を会社が給料から天引きしてくれるので安心ですが、自営業者等は年金保険料の払い込みを怠らないように、頑張っていただきたいものです。

 年金以外では、米ドルと株に分散投資をしましょう。米ドルと株は、値下がりのリスクはありますが、インフレに強い資産ですから、積極的に持ちましょう。銀行預金、米ドル、株をバランスよく持てば、どれかが値下がりしたり目減りしたりしても、全滅することはありませんから、安心です。

 米ドルと株を買うタイミングとしても、一度に大量に買わずに、時間をかけて少しずつ買いましょう。そうすれば、高い時も安い時も少しずつ買うことになるので、「後から考えて、大量に買った時が一番高値の時だった」ということが防げるので、安心です。

 <「20年後の暮らしとお金」は毎週金曜日の掲載です。久留米大学教授の塚崎公義さんが、老後の生活に困らないようにするにはいま、どうしたらよいのかを解説します>

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塚崎公義

塚崎公義

久留米大学商学部教授

1981年、東京大学法学部卒、日本興業銀行(現みずほ銀行)入行。主に経済調査関係の仕事に従事した後、2005年に銀行を退職して久留米大学へ。「退職金貧乏 定年後の『お金』の話」「老後破産しないためのお金の教科書」「増補改訂 よくわかる日本経済入門」「世界でいちばんやさしくて役立つ経済の教科書」「なんだ、そうなのか! 経済入門」など著書多数。

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