海外特派員リポート

元独連銀幹部「金融いじっても成長しない」論の真意

坂井隆之・統合デジタル取材センター副部長(元ロンドン特派員)
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伊勢志摩サミットの記念撮影に向かうドイツのメルケル首相(中央)ら先進国首脳=2016年5月26日撮影
伊勢志摩サミットの記念撮影に向かうドイツのメルケル首相(中央)ら先進国首脳=2016年5月26日撮影

 世界中の先進国が、成長押し上げとデフレ回避のため金融緩和にひた走る中、それに真っ向から異を唱える国がある。欧州最強の経済大国・ドイツである。ユーロ圏19カ国の代表者で構成する欧州中央銀行(ECB)理事会では、常にドイツが緩和反対の急先鋒。国内でも、「ECBの緩和は行き過ぎだ」との批判が連日メディアをにぎわす。かたくななまでの「反・金融緩和」のスタンスは、一体どんな論理に基づくのか。

 格好の人物に話を聞いた。ユルゲン・シュタルク氏。財務省高官を経て、ドイツ連銀(中央銀行)副総裁、ECB理事を歴任した。ドイツの財政・金融政策に対するスタンスを熟知するOBだ。

 「ECBが現在行っている金融緩和は、ほとんど効果はありません。むしろ害の方が大きい」。フランクフルト市内のカフェで語り始めたシュタルク氏は開口一番、こう言い切った。「そもそも現在の物価低迷の原因は、(資源・原材料など)商品市況の急落であり、消費にとってむしろプラスです。今の欧州は消費者心理は安定し、経済成長率もプラスでデフレとはほど遠い。パニックに陥る必要はどこにもありません」

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坂井隆之

統合デジタル取材センター副部長(元ロンドン特派員)

1972年、京都市生まれ。広島大学大学院修了。98年毎日新聞社入社。千葉支局を経て、2003年から経済部で日銀、金融庁、財務省などを担当。12年~16年、欧州総局(ロンドン)特派員として、欧州、中東、ロシア、アフリカの経済ニュースをカバーした。20年4月から現職。共著に「AIが変えるお金の未来」(文春新書)など。