青春小説の系譜

自己を投影した清張文学の核「或る『小倉日記』伝」

鶴谷真・毎日新聞学芸部記者
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芥川賞を受賞したころの松本清張=1954(昭和29)年、東京都内で撮影
芥川賞を受賞したころの松本清張=1954(昭和29)年、東京都内で撮影

 松本清張(1909〜92年)が1952年、文芸誌「三田文学」に発表し、翌53年に芥川賞を受賞したのが「或る『小倉日記』伝」だ。

 受賞時は43歳。「点と線」「砂の器」など、のちに大ブームとなる社会派推理小説のイメージが強い清張の出世作は、純文学だったのだ。いわゆる青春小説としては語られない本作だが、深刻な生きづらさと激しい自意識を内に秘めつつ、懸命に生きる青年の物語ゆえに、本欄で取り上げてみたい。

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鶴谷真

毎日新聞学芸部記者

1974年、神戸市出身。2002年毎日新聞社に入社し、岡山支局、京都支局を経て08年に大阪本社学芸部。13年秋から東京本社学芸部。文学を担当している。