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部下を次々と辞めさせた「パワハラ女帝」の最後

井寄奈美・特定社会保険労務士

 ある女性向け商品の企画会社に、社歴18年で企画部チーフデザイナーのAさんという女性がいました。彼女は「女帝」と呼ばれていました。

 通常、企画部は専門学校や美大出身の契約社員ばかりでしたが、Aさんは経済学部卒の総合職でした。

 Aさんは、入社時は営業部に配属されましたが、3年目に企画部に異動してから自費で夜間専門学校に通って必要な知識を身につけました。そして、営業部の担当者と積極的に顧客を訪問して得た情報を企画に生かすなどして、頭角を現していきました。企画部のデザイナーは直接顧客とは接触せず、営業部からの要望を聞くのが通例でした。Aさんはその通例を崩し、新たな手法を確立したのです。

 驚いたのは会社の上層部でした。実は、Aさんの入社当時は女性営業職がおらず、総合職として採用したものの、扱いに困って一時的に企画部に配属したのが本音でした。Aさんは非常にプライドが高く、顧客に頭を下げることができない性格で、営業部から放り出された人材だったからです。

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特定社会保険労務士

大阪市出身。2015年、関西大学大学院法学研究科博士前期課程修了。現在、大阪大学大学院法学研究科博士後期課程在籍中(専攻:労働法)。01年、社会保険労務士資格を取得。会計事務所勤務などを経て06年4月独立開業。井寄事務所(大阪市中央区)代表。著書に『トラブルにならない 小さな会社の女性社員を雇うルール』(日本実業出版社)など。http://www.sr-iyori.com/