職場のハラスメントどう防ぐ?

「任せすぎない」配慮裏目で女性社員が突然の退職

井寄奈美・特定社会保険労務士
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 Aさん(37)は、社員100人ほどの専門商社で契約社員として働く女性です。以前は大手金融機関の事務職でしたが、出産を機に退職し、第2子が幼稚園に入園してから、現在の会社で働き始めました。

 Aさんは細かいことにもよく気づく有能な人でした。パソコンも得意で、あっという間に作業を終え、定型業務に必要な計算式の入った業務用データを数多く作成するなど、積極的に事務の効率化に貢献していました。ただし、家庭を優先したい気持ちが強く、午後4時までの勤務で残業や休日出勤はしない、という契約でした。

 上司Bさんは、Aさんが定時に帰ることができるように最大限の配慮をしていました。BさんもAさんと同年代の子供を持つ父親で、少しでも早く帰してあげたいという気持ちからでした。そこで、当日中に必ず終えなければならない仕事は他の社員に依頼し、Aさんには期限に余裕のある仕事だけを頼んでいました。

 Aさんは入社して間もないころに、子供の発熱で急に休んだことがありました。Bさんはその経験から、「Aさんは優秀だけど、Aさんにしかできない仕事を作るのは避けよう。任せすぎないようにしよう」と心に決めていたのです。

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井寄奈美

特定社会保険労務士

大阪市出身。2015年、関西大学大学院法学研究科博士前期課程修了。現在、大阪大学大学院法学研究科博士後期課程在籍中(専攻:労働法)。01年、社会保険労務士資格を取得。会計事務所勤務などを経て06年4月独立開業。井寄事務所(大阪市中央区)代表。著書に『トラブルにならない 小さな会社の女性社員を雇うルール』(日本実業出版社)など。http://www.sr-iyori.com/