切ない歌を探して

「イパネマの娘」ジョビンのもう一つの名曲「愛の語らい」

森村潘・ジャーナリスト
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リオ五輪開会式で「イパネマの娘」を歌うダニエル・ジョビンさん(左)=2016年8月5日、和田大典撮影
リオ五輪開会式で「イパネマの娘」を歌うダニエル・ジョビンさん(左)=2016年8月5日、和田大典撮影

 リオデジャネイロ五輪の開会式では、ボサノヴァの代表曲「イパネマの娘」が演奏され、式場につめかけたブラジル国民が歌い、モニターには、作曲者であるアントニオ・カルロス・ジョビンの姿が映し出された。

 ピアノを弾いて歌ったのは、ジョビンの孫のダニエル・ジョビンで、人気モデルのジゼル・ブンチェンがしゃれたメロディーに合わせてさっそうと歩いた。リオの南部、イパネマの街に実在していた美しい少女を、ジョビンと作詞者である詩人のビニシウス・モラエスが目にして、世界的な名曲が生まれたことはよく知られている。

 シンコペーションをきかせたミディアムテンポのリズムで、小粋な雰囲気を醸し出すボサノヴァ。ポップスやジャズにも大きな影響を与えたこの音楽は、1958年の「シェガ・ジ・サウダージ」という曲が始まりだという。これもジョビンが作曲し、モラエスが作詞、ジョビンと並んでボサノヴァの立役者として知られ、ギタリストでもあるジョアン・ジルベルトが歌い、録音した。

 この3人が「イパネマの娘」を世界に送り出していくのだが、この曲をはじめジョビンは、他に類をみない不思議な魅力に満ちた名曲を次々とつくった。ヨーロッパの音楽を基盤としながら、ブラジルに根付いている複雑なハーモニーを感じさせるコードワークによって、彼のピアノから誕生する作品は、繊細な心の動きをメロディーにあらわしているようでもある。

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森村潘

ジャーナリスト

大手新聞、雑誌編集などを経てコミュニティー紙の編集などに携わる。ジャンルを超えて音楽を研究、アメリカ文化にも詳しい。