経済プレミアインタビュー

どアホノミクス進行で“地下経済”がふくらむ可能性

編集部
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浜矩子・同志社大学大学院ビジネス研究科教授=2016年9月15日、山口敦雄撮影
浜矩子・同志社大学大学院ビジネス研究科教授=2016年9月15日、山口敦雄撮影

「どアホノミクスの総括」浜矩子さんに聞く(3)

 「アベノミクス」を批判する浜矩子・同志社大学大学院ビジネス研究科教授は、マイナス金利を国民が嫌って金庫を買い現金をためる行動に着目する。こうした動きに「経済の地下化」の兆しを感じているという。どういうことなのだろうか。【聞き手は今沢真・経済プレミア編集長】

 −−アベノミクスが行き着くところまで行くと「恐慌」か「統制経済化」に進むと浜さんは言われています。国民がそれに巻き込まれないようにできるんでしょうか。

インタビューに答える浜矩子さん=2016年9月15日、山口敦雄撮影
インタビューに答える浜矩子さん=2016年9月15日、山口敦雄撮影

 ◆浜矩子さん 実は最近「恐慌」と「統制経済化」のほかに、第3の道があり得るかもしれないと思っているんです。悲惨な行く末かもしれませんが、もしかしたらおもしろい展開があるかもしれない。それは、アホノミクスのアホさ加減から人々が身を守ろうとして動く方向で、「日本経済の地下化現象」です。

 目に見えない経済活動。すべては現金取引で、領収証などなく、物々交換もありというようなものです。その片鱗(へんりん)がマイナス金利で人々が金庫を買って現金を詰めた、百貨店の友の会の会員になったというところに表れ始めた感じがするんです。

 ネット通販が普及した今日、通貨を介さず経済活動が回るかもしれない。今までと違う経済活動のスタイルの出現ですね。ただ、ヘタをすると通貨の回転率が低下して国内総生産(GDP)がなくなる。恐慌によるショック死ではなく、「漸進死」ですね。

 −−一般市民は、そこでうまく立ち回ることはできるのでしょうか。

 ◆浜さん できると思います。人間の営みとしての経済活動の真価が問われるところです。よき地下経済化がうまくいくためには、友達がたくさんいることが必要です。人と人との信頼関係や絆、新たな出会いがものを言うと思います。

 若者が、お百姓さんになりたがったりとか、地方に移住する人が増えたりとか、一種、逃避行動のように見えもしますけど、そこには追い詰められたものたちの一定の知恵が働いていると思うんですよね。

はじめは「ヘボノミクス」と言っていた

 −−さて、話は変わりますが、「アホノミクス」や「どアホノミクス」という言葉は浜さんの専売特許です。いつごろから使ったんですか。何かきっかけでも?

 ◆浜さん きっかけというか、思いついたんです。

 アベノミクスという言葉がものすごい勢いではやり始めたのが、けっこう早く、2012年12月の、第2次安倍晋三政権が誕生する総選挙の前からです。私はメディアの責任が大きいと思うんです。メディアが「アベノミクスだ、三本の矢だ」と飛びつかなければ、総選挙の結果は違っていたかもしれません。そういういかがわしいフレーズって、すごく「怖いな」と思ったので、この言葉を使わないで済むようにしたいと思っていたんですね。

第2次安倍政権が誕生し、記念撮影にのぞむ安倍晋三首相(前列中央)と当時の新閣僚ら=2012年12月26日、木葉健二撮影
第2次安倍政権が誕生し、記念撮影にのぞむ安倍晋三首相(前列中央)と当時の新閣僚ら=2012年12月26日、木葉健二撮影

 アベノミクスを駆逐する、打倒するための言い方を考えていて、最初は「ヘボノミクス」と言ったこともあったんです。でも「アホ」ならば1文字変えるだけで、まるでイメージが変わるということに気がついた。それでアホノミクスで行こうと。

 −−私がインターネットかなんかで見たのは13年の秋ぐらい……。

 ◆浜さん もっと前から使っているんです。それをメディアがビビッて最初のうちは出ませんでした。雑誌のインタビューなんかで「アホノミクス」と言ったら、結構衝撃的で、担当者にすごく喜んでいただきつつ「でも、ちょっとこれ、書けないですよね」と言われていたんです。だから13年の上期は表に出ないで、半年くらい私が言っているだけでした。

 −−あのころは、まだ円安や株高で勢いもありましたから。

 ◆浜さん メディアのみなさんも、これを使うことに勇気がいったんだと思うんです。でも今や、出版社のほうから「タイトルに使いましょう」と言ってくださるようになって、この変遷は、すごく大きいなと思っています。

ふと思いついて「どアホ」に

 −−さらに「ど」もつけて、「どアホノミクス」になりましたね。

 ◆浜さん それも比較的早かったんです。13年の5月くらいからです。「『アベノミクス』の真相」という本のプロモーションをやる会合がありました。そこでしゃべりながら、ふと思いついて「もはや『ど』をつけたくなった」と言ったんですね。そこが出発点です。安倍首相が成長戦略の中身を語り出して、やたら世界一になりたいと連発していた時期です。

 −−日銀が異次元の緩和を始めたのがその年の4月ですから、あっという間ですね。勇気がおありになると思います。いやがらせとかありませんでしたか。

 ◆浜さん 変な手紙は来ます。「あいつを辞めさせろと大学の学長宛てに手紙を書いたぞ」っていう内容のも来ました。本当にそうしたかはわかりませんけど。たまに講演先で質問と称して罵倒してくる人もいます。そういう程度ですけどね。

インタビュー終了後、今沢真・経済プレミア編集長(手前)と談笑する浜矩子さん=2016年9月15日、山口敦雄撮影
インタビュー終了後、今沢真・経済プレミア編集長(手前)と談笑する浜矩子さん=2016年9月15日、山口敦雄撮影

 <「浜矩子さんに聞く」は今回で終わります>

【(1)アベノミクス物価2%上昇はいつまで「道半ば」か

【(2)黒田日銀が国債を直接引き受けたら超インフレの悪夢

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長く経済分野を取材してきた川口雅浩・毎日新聞経済部前編集委員を編集長に、ベテラン・若手編集者が経済・社会の最新情勢を追います。
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