海外特派員リポート

マイナス金利で先行した経済小国スイスの悲鳴

坂井隆之・統合デジタル取材センター副部長(元ロンドン特派員)
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街頭でチェスを楽しむ高齢者たち=ベルン市内で2016年8月31日、坂井隆之撮影
街頭でチェスを楽しむ高齢者たち=ベルン市内で2016年8月31日、坂井隆之撮影

 日銀が今年1月に導入した「マイナス金利」。だが、日本をはるかに上回るマイナス金利を導入している国が、欧州にある。人口830万人の永世中立国スイスである。2015年1月の導入後に順次拡大し、現在は0.75%(日本は0.1%)。現地を訪ねると、大国の金融政策に翻弄(ほんろう)される小国ゆえの苦悩が見て取れた。

 「資金を預ける全ての銀行でマイナス金利を取られる。低金利による資金運用難と併せて、環境は厳しい」。州政府が運営する老齢・遺族年金(日本の基礎年金に相当)の資金運用を担当する連邦社会保障基金のエリック・ブレバール代表は、ジュネーブの本部で苦境を語った。

 マイナス金利は、民間銀行が中央銀行に預けた資金の一部にマイナスの利息を課す制度だ。いわば預金に「ペナルティー」を科し、銀行に貸し出しや投資の増加を促す。お金が海外に向かえば、自国通貨高を防ぐ効果も期待できる。スイスの中央銀行であるスイス国立銀行(SNB)は、通貨スイス・フランの高騰を防ぐため、大幅なマイナス金利を導入した。マイナス金利のコストに苦しむ銀行は、相次いで顧客に「口座管理料」などの名目…

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坂井隆之

統合デジタル取材センター副部長(元ロンドン特派員)

1972年、京都市生まれ。広島大学大学院修了。98年毎日新聞社入社。千葉支局を経て、2003年から経済部で日銀、金融庁、財務省などを担当。12年~16年、欧州総局(ロンドン)特派員として、欧州、中東、ロシア、アフリカの経済ニュースをカバーした。20年4月から現職。共著に「AIが変えるお金の未来」(文春新書)など。