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売れ残った犬猫がたどる悲しい運命を知っていますか

駅義則・元時事通信記者
明け方まで営業する繁華街のペットショップ。売れ残った動物の行方を気にする人は少ない
明け方まで営業する繁華街のペットショップ。売れ残った動物の行方を気にする人は少ない

 ブームが盛んになればなるほど、闇に葬られるペットが増えるとの懸念が、動物愛護団体を中心に強まっている。大量生産には必然的に売れ残りが伴うからだ。こうしたペットを、どんな運命が待つのだろうか。栃木県中部の山あいの施設で犬や猫を劣悪な飼育環境に置き、10月17日に栃木県警から動物愛護法違反(虐待)容疑で書類送検された「引き取り業者」の例を紹介しよう。

 「17~18年前からやっていて最盛期には200匹強いた」。引き取り業の会社を経営してきたS氏は、送検前の電話取材にこう語った。廃業を強いられたブリーダーから犬や猫を引き取って飼育し、別のブリーダーなどに転売するのが、主要な業務だった。

 10年ほど前から飼育環境が劣悪になったとの通報を受けた公益社団法人・日本動物福祉協会が調査したところ、排せつ物の処理などが適切に行われず、19匹の犬や猫が体調を崩していた。協会はS氏の会社が動物愛護法44条2項の適切な飼養管理及び健康管理等を怠った虐待罪に該当するとして告発、今年5月に同県警が受理していた。

「俺がやめたら殺処分しかなくなる」

 協会が調査した時に撮影された写真には、死後も放置された犬などの惨状が捉えられている。告発状に付けられた「被虐待犬猫一覧表」によると、栄養失調により死んだミニチュアダックスフントや、ダニの付着に耐えかねて目や首の周辺をかき過ぎ、皮膚が欠損したアビシニアン(猫)がいた。

 だが、S氏は「殴ったり蹴ったりはしておらず、虐待したつもりはない」と言い切った。刑事処分を受けたとしても事業は続けるつもりだという。「俺がやめたらみんな困るでしょ。殺処分するしかなくなるだろうし」というのが、その言い分だ。

 動物福祉協会の川崎亜希子・栃木支部長は「現在の動物愛護法では、必要最低限の世話をせずに放置するネグレクトの場合も虐待罪に問われることを、S氏は知らなかったようだ」と指摘。「県が実態を把握して指導していれば、こんな惨状にはならなかっただろう」と話す。

事件は氷山の一角

 栃木…

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元時事通信記者

1965年、山口県生まれ。88年に時事通信社に入社。金融や電機・通信などの業界取材を担当した。2006年、米通信社ブルームバーグ・ニュースに移り、IT関連の記者・エディターなどを務めた。また、飼い主のいない猫の保護や不妊化にも携わっている。