思いを伝える技術

電通過労自殺を「情けない」と責めた教授の情けなさ

川井龍介・ジャーナリスト
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午後10時に一斉消灯された電通の本社ビル(左)=2016年10月24日、猪飼健史撮影
午後10時に一斉消灯された電通の本社ビル(左)=2016年10月24日、猪飼健史撮影

 大手広告代理店電通の女性新入社員の自殺が「過労自殺」だったと労災認定された事件は、雇用主である電通の企業責任が厳しく問われています。この女性は、昨年4月に入社し、長時間の過重労働によってうつ病を発症し、自殺に追い込まれました。

 母子家庭で育ち、努力の末東京大学に入り、就職して母親を楽にしてあげたいと願っていたといいます。これから先の人生にはさまざまな可能性や夢があったでしょう。それが過重労働の上、「君の残業時間は会社にとって無駄」などと上司から言われ精神的にも追い詰められていました。

 残された遺族のことを思い、多くの人が胸を痛めたはずです。ところが、世の中には別の見方もありました。武蔵野大学グローバル学部の経済を専門とする教授が、自殺した女性の責任を問うような言葉をインターネット上に投稿しました。

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川井龍介

ジャーナリスト

1980年慶応大学法学部卒。新聞記者などを経てフリーのジャーナリスト、ノンフィクションライター。実用的な文章技術を説いた「伝えるための教科書」(岩波ジュニア新書)をはじめ「大和コロニー~フロリダに『日本』を残した男たち」(旬報社)、「フリーランスで生きるということ」(ちくまプリマ―新書)を2015年に出版。このほか「ノーノー・ボーイ」(ジョン・オカダ著、旬報社)の翻訳をてがける。