下流化ニッポンの処方箋

若者世代貧困化が生み出す「老人ポスト」の衝撃

藤田孝典・NPO法人ほっとプラス代表理事
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 団塊世代(1947~49年生まれ)が75歳以降の後期高齢者となる2025年が、9年後に迫っています。

 医療費と社会保障費の爆発的な増加と、医療・介護環境の逼迫(ひっぱく)が予想されています。この状況を「2025年問題」と呼びます。今回は、現在の若者世代の貧困が、2025年問題と後期高齢者に暗い影を落とす状況をお伝えします。

 厚生労働省の資料「社会保障制度改革の全体像」によると、日本の現在の社会保障給付費は115.2兆円(2014年度予算ベース)。内訳は年金56兆円▽医療費37兆円▽福祉その他22.2兆円--。対国内総生産(GDP)比は23%です。財源割合は、保険料64.1兆円(うち被保険者拠出34.4兆円、事業主拠出29.7兆円)▽国税31.1兆円▽地方税11.9兆円--です。

 社会保障給付費は、後期高齢者の増加に伴って25年には148.9兆円までふくらむと予想されています。今のままの税率と社会保障システムで、膨大な給付を現役世代が背負えるのかどうか、はなはだ疑問です。

 日本は20年ほど前に非正規雇用を増やし始めました。雇用破壊の影響を最初に受けた「ロスジェネ」(ロスト・ジェネレーション)世代が40代になり、膨大な数の低賃金労働者が後に続いてます。

 彼らは実家に住んだり、仕送りをもらったりして団塊世代の親に依存しています。しかし、親が後期高齢者となって医療や介護の出費が増えても、子供たちはそれをまかなえない可能性があります。お互いにもたれ合ってきた関係が、いよいよ崩れる時期が来るのです。

 埼玉県深谷市で2015年11月、認知症の81歳の母と、病気で働けなくなった74歳の父の自殺を手助けしたとして、三女(47)が殺人と自殺ほう助の罪に問われる事件がありました。

 三女は高校を中退し、その後仕事に就いたものの退職。事件当時は無職で、家族は父親の月収18万円の新聞配達で暮らしていました。三女は母親の介護を13年間も続けていました。

 ところが、父親が頸椎(けいつい)の病気で働けなくなり、退職。一家は事件の4日前に生活保護を申請したものの、将来を悲観し、「心中しよう」という父の提案に同意して、3人…

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藤田孝典

NPO法人ほっとプラス代表理事

1982年生まれ。NPO法人ほっとプラス代表理事、聖学院大学人間福祉学部客員准教授、反貧困ネットワーク埼玉代表。厚生労働省社会保障審議会特別部会委員。ソーシャルワーカーとして現場で生活困窮者支援をしながら、生活保護や貧困問題への対策を積極的に提言している。著書に「貧困クライシス 国民総『最底辺』社会」(毎日新聞出版)「下流老人 一億総老後崩壊の衝撃」「ひとりも殺させない」「貧困世代 社会の監獄に閉じ込められた若者たち」など。