
質問をして、相手から言葉を引きだし、事実や気持ちを探るインタビュー。話を聞いて答えてもらえればうまくいったと思ったら、これがそうでもないのです。それを痛感したのが、沖縄のリゾート開発を現場で手がけ、その後も運営に携わったマネジャーに話を聞いたときです。
何もないところから造り上げた苦労は大変なものだと想像できましたが、その人は「たいしたことはありませんでしたよ。いまも適当にやっています」といった感じで答えます。しかし、2、3日その人の仕事ぶりを見ていると、職員に率先して体を動かして業務にあたっていました。
「この人の“適当”とは、ふつうの人が言う“一生懸命でまじめ”のことなのだな」と、気がつきました。「仕事は適当にやっています」などと、この人の言葉通りに紹介したら、本当のことは伝わりません。同じように、「いやーもう忙しくて忙しくて」と困ったような顔をしている人で、やっていることを見るとそうでもないことはあります。
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川井龍介
ジャーナリスト
1980年慶応大学法学部卒。新聞記者などを経てフリーのジャーナリスト、ノンフィクションライター。実用的な文章技術を説いた「伝えるための教科書」(岩波ジュニア新書)をはじめ「大和コロニー~フロリダに『日本』を残した男たち」(旬報社)、「フリーランスで生きるということ」(ちくまプリマ―新書)を2015年に出版。このほか「ノーノー・ボーイ」(ジョン・オカダ著、旬報社)の翻訳をてがける。