猫ブームの光と陰

猫の不妊手術が守った「クロウサギと世界遺産への道」

駅義則・元時事通信記者
  • 文字
  • 印刷
                    ハブにかまれ縫合手術を受けた猫。手術翌日から餌をよく食べた。地元出身の、長寿で有名な泉重千代さんにちなんで重(しげ)ちゃんと命名された=どうぶつ基金提供
                    ハブにかまれ縫合手術を受けた猫。手術翌日から餌をよく食べた。地元出身の、長寿で有名な泉重千代さんにちなんで重(しげ)ちゃんと命名された=どうぶつ基金提供

 全国各地で猫の無料不妊手術を行っている公益財団法人「どうぶつ基金」。活動に協力する動物病院も81に増えた。しかし、活動が知られるほど寄せられる「SOS」も急増し、対処しきれない実情も垣間見える。今回は昨年取材した、鹿児島県・徳之島でのどうぶつ基金の一斉不妊手術の現場を紹介しよう。

 徳之島では、猫は、ネズミを退治したり、豚の感染症を媒介する小鳥を食べたりするため畜産農家などで重宝されてきた。島内の猫はほとんど放し飼いで、繁殖し放題だった。ペットというよりも「そこらへんにいる存在」(地元自治体職員)であり、昨年6月まで、島には動物病院もなかった。

 どうぶつ基金の一斉不妊手術が実現したのは、徳之島など奄美群島を世界自然遺産に登録しようとする動きがあったため。登録を目指す上で大切な要素であるアマミノクロウサギが、野良猫に捕食されて絶滅の危機にひんし、徳之島町、伊仙町、天城町の地元3町が腰をあげたからだ。依頼を受けたどうぶつ基金は、島内に飼い猫、野良猫合わせて約3000匹の猫がいると推定。3町と協議してすべてに不妊手術をすることにした。

この記事は有料記事です。

残り1425文字(全文1896文字)

駅義則

元時事通信記者

1965年、山口県生まれ。88年に時事通信社に入社。金融や電機・通信などの業界取材を担当した。2006年、米通信社ブルームバーグ・ニュースに移り、IT関連の記者・エディターなどを務めた。また、飼い主のいない猫の保護や不妊化にも携わっている。